「御社は昨年くらいに一度建て替えたの?」。ある財務省幹部が本紙を訪れた際、エレベーターホールで出迎えた私に耳打ちした。私が「(建て替えたのは)10年以上も前ですね」と告げると、幹部はどこか納得いかない様子で周囲を見渡した。 ただ、幹部がそう感じたのは無理もない気がする。彼らが勤務する財務省庁舎は昭和18年に完成した。壁のあちこちにはひびが入り、節電のためか館内全体が薄暗い。それに比べれば、たかだか築10年前後のビルなんて、まさに新築同然に見えるのだろう。 一般的な尺度でいえば、財務官僚は「超」が付く優秀な人材だ。東大首席卒業や国家公務員試験トップといった経歴の持ち主がずらりと並び、語学も堪能。司法試験の合格者も多数いる。そんな、一般企業に就職したなら「引く手あまた」の人材が、ひび割れた壁に囲まれ、一般的な公務員とほぼ変わらない給与で、昼夜を徹して働く仕事を選んでいる。 なぜだろうか。陳腐な