師走の寒風が吹き抜ける夜の繁華街。北九州市小倉北区の堺町地区では、サラリーマンやOLらでにぎわう路地を、制服姿の警察官が3人一組で絶えず巡回する。「忘年会シーズンなのに一晩中あんな感じ。物々しくて商売あがったりやけん」。厳しい表情で周囲に目を配らせる警察官の後ろ姿を目で追いながら、客引きをしていた男性(26)がつぶやいた。 堺町はJR小倉駅の南側にあり、隣接する鍛冶町、紺屋町とともに居酒屋やスナック、クラブなどの飲食店が密集する。中洲(福岡市博多区)と並ぶ九州有数の歓楽街は8月以降、異様な緊張感に包まれている。 きっかけは、福岡県が暴力団排除条例に基づき同月から導入した「暴力団員立入禁止標章」制度だ。「暴力団員 立入禁止」と書かれたB5判の標章を、北九州市や福岡市など県内5市の繁華街にある飲食店の入り口に掲示。無視した組員には福岡県警が中止命令を出し、従わなければ50万円以下の罰金が科され