あさりは事務所での収録の帰りに呼び止められた。 「あさりちゃん最近みんなの相談に乗っているんですって?」 「げぇっ!たにし先輩!!」 「……流石に失礼じゃない?」 ロールパンのようにゆるく丸まったサイドレールが揺れる。 失礼なのは認めるが、あさりの本能が告げていた。『絶対に濁川たにし先輩は重すぎる相談をしてくる』と。 この業界にベテランを見たら「生き残り」と思え。 喫茶店に場所を移して世間話をする。さすがにベテラン、「重大告知」や「大切なお知らせ」が待っていることが明らかな状況でも話術で盛り上げてくれた。思い悩まずにこの話術を活かしていればいいと思うのだけど、よく考えるから話術が磨かれているのかもしれない。 「それで……」 たにしは旦那の話をするマダムの風情で息を吐いた。本題を口にする。 「最近リスナーさんにマリトッツォで言われちゃったの……近頃のたにしんはコラボ相手のことばかり見て、リス
騎士などの乗り物として、割とファンタジーに欠かせない存在である馬。そんな馬は進化の過程で指の本数を減らしてきた。たとえばWikipediaの「ウマの進化」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%9E%E3%81%AE%E9%80%B2%E5%8C%96 にまとめられている。 進化の途上においては馬の指が3本や4本だった時期があるのだが、そういう馬をあえて作品に登場させることでエキゾチックな雰囲気を出せないかと考えた。 その際に問題になりそうなのが蹄鉄の装着である。三本の指すべてを一枚の蹄鉄でまとめる形で装着したら、馬の健康を害するかもしれない。 確認すると蹄が一本の足に二つある偶蹄目の牛はかつては蹄鉄を装着していたらしく、蹄ごとに別の蹄鉄をつけていたことがわかった。Wikipediaの「蹄鉄」よりhttps://ja.wikipedia.
人間には時間を分解して見ることのできる限界があるという。https://jp.gamesindustry.biz/article/1909/19090502/ 一部の昆虫は人間よりも細かく時間を分解して認識できたはずである(確かハエかトンボについて書かれた記事を読んだのだが本のタイトルを失念)。 ならば異世界人は別種で転移者(転生者だとマズいかも)の方がフレームレートが高くて、異世界人には認識できないタイミングで戦うことができ(感覚的には無拍子で打ち込まれることになる?)無双するって設定はありなのではないか。なお、逆に異世界人の方がフレームレートが高いパターンに当たったら絶望するしかない(脳の処理能力・エネルギー消費などで一概に高ければいいとは限らないが)。 まぁ、SFで言えば「竜の卵」のやっていることが、それの非常に極端な例になるはず。漫画TERRFORMARSで昆虫と融合した人間の中に
文武と真琴は武器の訓練をはじめた。 武器を使わずに済めばそれに越したことはないが、転移者たちは城を与えられた時に参戦の義務も負っていた。一年以内に元の世界に戻れないなら再び戦場に立つ羽目になるだろう。そうでなくても日常的に自分の力で我が身と仲間と領民を守る必要があった。 この世界に助けてくれる警察はいないのである。かろうじて王が裁判をしてくれることがある――それも公平とは限らない――だけだ。 転移者たちはいきなり自力救済の世界に放り出されることの恐ろしさをひしひしと感じていた。領民も庇護が本当に期待できるのか、不安でしょうがないはずだ。 ともかく二人は身体を資本とするべく鍛錬に励む。残りの二人もたまに参加した。 文武は槍を、真琴は剣道の心得が少しあったので剣と弓の腕を磨くことにした。だが、困ったことに師になれる人材がハティエ城にいなかった。実戦経験のある兵士はいても体系的に武術を学んだわけ
中世のガラス板はシリア発祥のクラウン法という技術で作られていて、初期はビール瓶の底サイズであったものが、直径1mくらいまで製作できるように進歩していったことを知った。それを四角く切って使用していたらしい(円形のものを敷き詰めたものも見かけるhttp://www.nissouren.jp/laboratory/laboratory_detail/1377870985507bebeb1f285) 材料の無駄なく効率的にガラス窓を作るならば四角く切り取るよりも正六角形に切り取った方が有効なのではないか?これで中世改革!一攫千金!というネタを考えてみたのだが、いろいろと難しい気もしている。 末端部の処理はどうするのか。六角形の突き出す部分の形に合わせて建物側を加工するのは石材では難しいだろう(できないわけではない)。板材の家ならガラスを使えるほど金がないのではないか。そもそも板ならば円形に切り取っ
ハティエ城の屋上から東をみると、青緑色をした木々の向こうにフォウタ湖の水面が夕日に照らされて輝いていた。この世界では太陽は西から登り東に沈むものと定義されていた。あるいは太陽が南中ではなく北中すると考えてもいいのだが、北半球育ちの人間にはどちらもややこしいので、転移者たちは郷に入っては郷に従うことにしていた。 司による文字の解読はアレンの助けもあってほぼ完了していた。風雲島で使われている文字は日本語を音で記述する表音文字と考えて良さそうだ。厳密な意味の「仮名」ではない。変体仮名に相当する文字がないからだ。基本的に一音は一字である。ただ、文頭に使われる文字には少し変形が加わることで文章を読みやすくする工夫がなされていた。その法則をちゃんと守っていないテキストも多々あるようだが……おかげで筆者の受けた教育を推定できた。 くずし字にならず一文字ずつしっかり書く傾向が強いことにも、かなり助けられて
「失敗した~っ」 肉の切り分けに手間取った夕食の後、文武は床にどっさり藁を敷いた上に毛布を重ねただけのベッドに寝転がり落ち込んでいた。木の枠に藁をぶちこんだベッドは女性陣に譲ったつもりだったのだが、女性陣も寄生虫――シラミやナンキンムシを警戒してベッドの使用を控えていた。 彼らの部屋は城の三階である。中央を貫通する大黒柱および螺旋階段の区画との間に壁と扉がある他は室内に固定された物は何もなく、一つの階がまるごと一室をなしていた。日本史の資料集にあった平安貴族の暮らしで、部屋の中は仕切りを移動させてパーテーションをつくると解説されていたようなやり方だ。 二世代ほど前までは城の二階で城主から召使いまで住民全員が枕を並べていたと言うから想像を絶する。幼少期から一緒に育った関係性もなく、いきなり城主に指名された文武たちにはとても真似できない。 プライバシーのない現状は、ゆいいつ男の文武にとっても困
岐阜県博物館で開かれた特別展の解説書。 復元イラストを手掛ける小田隆氏と復元模型を手掛ける徳川広和の仕事をそれぞれ紹介している。 小田隆氏の作品は三重県総合博物館所蔵のものが非常に多くて、三重県総合博物館には小田隆氏以外の描いた復元イラストはあるのかと気になってしまうほど。描いた人が統一できていれば展示の統一感も高くなるだろうな。 恐竜だけじゃなくて魚類や哺乳類も描ける小田隆氏の幅広さあってこそでもある。 いろいろな古生物を並べたイラストで、パラケラテリウムがティラノサウルスに負けない大きさなのが実感できた。まぁ、パラケラテリウムは巨大草食動物で恐竜の巨大植物食はもっと大きくなるのだが。 徳川広和氏の作品は本人所蔵品ばかりだった。最後に岐阜県博物館所蔵模型での制作方法解説がある。この特別展の機会でなければ、実物を見ることは難しかったのではないか。 ティラノサウルスやハルキゲニアについて、あ
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