瓜田純士「ドブネズミのバラード」(→amazon.co.jp)読了。 僕が彼の顔に見覚えがあったのは、この本のカラーページにも掲載されている供攻社の記事を読んだからでした。あの一目見て強い印象を残す男が逮捕され、刑期を終え、そして作家になって僕の手元に本が届くとは。編集が海猫沢めろんさんと北尾修一さんというコンビなのにも驚きました。 一読した印象は、ケータイ小説に近い感覚のスタイルだということ。しかし、そんな違和感も、幼少時から暴力に血塗られた自伝を読むうちに忘れていきます。アウトロートしての陰惨な日々と、その後に訪れる精神的に崩壊していく日々の強烈なコントラスト。 実在する登場人物への配慮で一部意図的に話が省略されていて食い足りない部分もありますが、壮絶な人生が読者を引き込みます。この自伝を経て、フィクションの作品を書いてくれることも期待したくなりました。
藤井誠二「学校は死に場所じゃない―マンガ『ライフ』で読み解くいじめのリアル」(→amazon.co.jp)は、ノンフィクションライターがすえのぶけいこのマンガ「ライフ」を通していじめについて書いた書籍。 ふりがなの多さや敬体で、一読してこの本が若い読者に向けて書かれていることがわかります。携帯電話、ブログ、「学校裏サイト」と呼ばれる掲示板などが存在するために、学校という場の同調圧力から24時間逃げられない現状を指摘し、ときに「ライフ」のリアルさと現実との違いについても言及しつつ、藤井誠二は学校は「通過すればよい」と明確なメッセージを発しています。 「学校にクラスや固定席はいらない」「すべての学校にソーシャルワーカーを」といった提言を盛り込みつつ、相談を誰にすればいいのかも具体的にアドバイスしており、単なる「ライフ」の便乗本ではない重みがありました。少年事件のルポタージュを書き続けている藤井
「岡沢宏志の『岡沢宏志の僕のこと好きですか?』レポート :おた☆スケ -おたくのスケジュール帳-」で、アイドルゴシップクリッピングでおなじみ岡沢宏志さんによる、ジュニアアイドル・岸波莉穂へのインタビュー動画が公開されました。これが最高にひどくて素晴らしいです。 オフィシャルなYouTube版動画があるので貼ってみます。音楽はO-TOさん。 岡沢宏志さんに話しかけられてなぜか岸波莉穂がビクッとするところから始まり、岸波莉穂については何も聞かない問答が続いた挙句に、中盤では「おとうさんと僕、2人とも崖から落ちそうになっています。でも1人しか助けられません。どちらを助けますか?」という質問に、間髪いれずに岸波莉穂が答えるなど、かなりスリリングな様相を呈しています。そして後半では遂に岸波莉穂の口から「気持ち悪い」という言葉が……! アイドルに対してインタビューアーが自分自身について聞き続けるという
鈴木謙介「ウェブ社会の思想―〈遍在する私〉をどう生きるか」(→amazon.co.jp)は、社会学者が情報化社会を考察した書籍。 テクノロジーが発達し、ユビキタス化、ヴァーチャル化が進む状況の中では、自分に関する情報が偏在するようになり、人間の行動をも決定づけることになる、というテーマを掲げています。インターネットを含む現在のIT技術の根幹が、ヒッピー・カルチャーに影響を受けているという指摘は、近年では忘れられがちですが重要な指摘です。また、宿命と人間の関係を考える際に、古谷実の「ヒミズ」を例に挙げるというアクロバティックな展開は面白かったです。 ただ、副題の「〈遍在する私〉をどう生きるか」というような具体的な未来像の提示に関しては、セカイ系などを引き合いに出してもなお物足りなく、残念に感じました。
安藤健二「封印作品の闇 キャンディ・キャンディからオバQまで」(→amazon.co.jp)は、「封印作品の謎2」を改題、加筆・修正、新編集した文庫。 「封印作品の謎2」については、「2007年にほとんど封印されている『オバケのQ太郎』『新オバケのQ太郎』を求めて」でもご紹介しましたが、文庫版のために書き下ろされた第5章では、遂に決定的と思われる理由を、小学館の元幹部からの証言を元に記しています。僕も「サイゾー」で「オバケのQ太郎」「新オバケのQ太郎」の絶版問題を扱った際には、藤子プロや小学館のあまりの防壁の高さに驚かされたものですが(ちなみに本書の319ページに出てくる『ある雑誌記者』とは僕のことです)、遂に安藤健二は裏を取ることに成功したわけです。核心部分を書いたこと自体もリスキーな行為なだけに、この新章には敬意すら感じました。「オバケのQ太郎」「新オバケのQ太郎」ファンは必読です。
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く