ある若い女性からの手紙が出版社経由で送られてきた。そこには、彼女自身の過去の体験が綴られ、『他者の靴を履くアナーキック・エンパシーのすすめ』という本でわたしが展開した「自分の靴を履く」という概念についての感想が記されていた。 彼女は、他人の評価ばかり気にして、自分の足に合わない靴を履くために足の指を切り落とすような体験をしたという。自分の外見を変えるために生命の危険すらおかしてしまったと綴られていた。けれども、周囲の人々との出会いによって自分の思い込みや固定観念が解けて楽になれたそうで、それは、たくさんの靴を履くことによって自分の靴を見つけたようだったと彼女は表現していた。 時々、こういう感想が届く。そしてそのたびに物書きをしていてよかったと思うのだが、同時に、この読者とわたしの本が出会った経緯について思いをはせてしまう。書店だろうか、それともネットの書評とか、SNSだったのだろうか。偶然