双極性障害の治療は炭酸リチウムやバルプロ酸、ラモトリギンなどの気分安定薬で行われます。それでも抑うつ状態が生じることは多いもの。そんなとき、どんな手があるのでしょうか。 抑うつ状態にある双極Ⅱ型障害21名を6週間観察し、プラセボで9%、プラミペキソールで60%に改善が得られたという報告(Zarate et al., 2004)、双極性障害22名を6週間観察し、プラセボで20%に、プラミペキソールで67%に改善が得られたという報告(Goldberg et al., 2004)、プラミペキソールで双極性障害の44%に治療反応が得られていたとする報告(Perugi et al., 2001)、双極性うつ病の50%に改善が得られたとする報告(Sporn et al., 2001)があります。まとめて言えば、双極性うつ病にプラミペキソールを使用すると半数で改善が得られると言えるでしょう。 ただ、躁状
双極性障害は、平常気分でいられる期間がおよそ半分程度で、残りの期間を双極Ⅰ型であれば躁や軽躁の3.5倍の期間を抑うつで過ごし(Judd et al., 2002)、双極Ⅱ型であれば軽躁の38.7倍の期間を抑うつで過ごすといい(Judd et al., 2003)、抑うつ状態が非常に多い病気です。 双極性障害であれば気分安定薬で治療が行われるはずですが、抑うつ状態が多いことから抗うつ薬を使いたくなるもの。さて、双極性障害に抗うつ薬を使っていいのでしょうか。 双極性障害の患者に抗うつ薬で用いたとき、躁状態が生じること(いわゆる躁転)が増えることを心配する医療者多いもの。ただ、気分安定薬で治療しているのであれば、抗うつ薬を追加しても躁転は増えないとする見かたもあります(Tada et al., 2015)。ただ、それも薬によって違うようで、躁転の率はプラセボに比して、三環系抗うつ薬やSNRIでは
DSM-5の物質関連と嗜癖の障害の章を日本語訳しました。 DSM-IVにおける乱用と依存が「使用障害」として統合されました。乱用の4項目のうち、違法性を問う項目を削除した3項目+依存の7項目+摂取欲求についての1項目を合わせた計11項目で診断することになりました。 DSM-IVの依存症は3項目以上を満たしたものを診断しましたが、DSM-5の使用障害は2項目以上満たせば診断に至ることになり、以前よりも診断が広がっているといえるでしょう。 下記の【物質】にはアルコール、カフェイン、大麻、幻覚剤(フェンザイクリジン、他の幻覚剤)、吸入剤、アヘン類(オピオイド)、鎮静薬(睡眠薬または抗不安薬)、覚醒剤、タバコ、その他(または未知)などの特定の物質名が入ります。原著では、個々が別々に扱われています。物質により、物質の特性に合わせて基準にわずかに違いが生じています。詳細についてはPDFのファイルをご覧
診断基準DSM-5の「タバコ使用障害」を日本語訳してみました。従来のタバコ依存(ニコチン依存)に相当するもの。この診断基準を通して、続いてしまっている喫煙を見直していただきたいもの、ぜひ禁煙に踏み切っていただきたいものです。 タバコ使用障害.pdf タバコ使用障害 Tabacco Use Disorder A. 臨床的に重大な障害や苦痛を引き起こすタバコ使用の不適応的な様式で、以下の2つ以上が、同じ12ヶ月の期間内のどこかで起こることによって示される。 1. タバコをはじめのつもりよりも大量に、またはより長い期間、しばしば使用する 2. タバコを中止、または制限しようとする持続的な欲求または努力の不成功のあること 3. タバコを得るために必要な活動、またはタバコ使用に費やされる時間の大きいこと 4. タバコの使用に対する渇望・強い欲求または衝動 5. タバコの反復的な使用の結果、仕事・学校
DSM-5における、大うつ病(Major Depressive Disorder"を含む抑うつ障害(うつ病性障害)の章を日本語訳しました。日本語版が発売されるその日までの間、参考にして頂ければ幸いです。 DSM-5うつ病.pdf DSM-IVでは死別反応を超えるものを、2ヶ月以上続くもの、または重度の特徴を持つものと定義されていました。DSM-5では2ヶ月や症状などの人為的な線を引かず、死別反応の範囲か否かは、臨床的な判断に委ねられました。 DSM-IVでは「産後うつ病」が扱われていましたが「出産前後のうつ病」に拡大されましたた。 気分変調症と慢性うつ病が「持続性抑うつ障害」に統合されました。2年以上が経過した大うつ病は「大うつ病+持続性抑うつ障害」とすることになりそうです。 その他、小さな変更点が色々とありますのでご確認ください。
自記式の抑うつ状態の評価尺度"PHQ-9"を使用するようになりました。項目はDSM-IVの抑うつの項目の頻度を問い、各項目0~3の点数をつけてもらうものです。点を合計し、9項目で0~27点の点になります。 PHQ-9.pdf 頻度だけを扱い、強さや質を問わず、非常に単純です。その評価に深みは感じられませんが、お気軽に実施できます。そして、DSM-IVの項目なので、医師の立場からすると抑うつ状態の患者さんの初診で扱うと、DSM診断の助けになります。 スコアが10以上は、大うつ病に対して感度・特異度とも88%だったと報告されています。5点以上は軽度、10点以上は中等度、15点で中等度の重度、20点で重度と評価できるとされています。 医師が用いるだけでなくうつ状態の患者さんが、通院のたびに自分でPHQ-9をつけて主治医に渡すのもオススメできるかもしれません。
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