信州大学人文学部の伊藤盡さんは、研究の柱に「日本のマンガにおける北欧神話受容史の萌芽研究」を掲げている。たしかに、日本には北欧神話に題材をとったマンガはとても多く、少しでも関心のある人なら5つどころか10以上、挙げられるだろう。21世紀になってからは、いわゆるライトノベルで扱われることも増えた。もはやすべてを把握するのは不可能ではないかという水準だ。 こういった日本人の北欧神話好きはどこから来て、今どのように結実しているのか。伊藤さんによれば、アジアにおいて北欧神話をかくも受容し、新たな文化的な創造物を送り出し続けているのは、今のところ日本だけだという。我々は何をそこに見るべきなのか聞いていきたい。 そのためには、マンガに限らず日本における北欧神話の受容史を、まずは簡単に解説してもらう。 「日本で北欧神話が受容されていく中には、やっぱり転機は3回あったと思います。1回目は山室静さん(190