「惡の華」10巻 ファミレスの二人 講談社コミックス マガジンKC 押見修造 他人からの視線・自分の視線、二つの交錯する様が画面の構図を決めていると言っても過言ではないほどに、「惡の華」はキャラクターの視線を追っていく読み方を強制される。視線を合わせずに会話を繰り広げる彼らの戯れには、厭世感すら漂う。行き場のない田舎で成長するも事件によってその地を離れて生きる主人公の春日は、日本有数のターミナル駅を控えた交通の要所・大宮でひっそりと暮らしていた。 春日が目指した生き方は、読書家としての特別な自分を捨て、群れに紛れる平凡な人生だった。本を読まずクラスメイトを軽侮せず、目立たず、かといって孤立せず、新天地で息をするのさえ遠慮するように生きていた。彼は、そんな自分を「からっぽ」だと表現したのである。からっぽ。その発想自体が、すでに周囲の何かしらに満ちている他人とは違う・特別な自分であるという隘