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ブックマーク / www.h2.dion.ne.jp/~hkm_yawa (35)

  • 押見修造「惡の華」10巻 ファミレスの二人

    「惡の華」10巻 ファミレスの二人 講談社コミックス マガジンKC 押見修造 他人からの視線・自分の視線、二つの交錯する様が画面の構図を決めていると言っても過言ではないほどに、「惡の華」はキャラクターの視線を追っていく読み方を強制される。視線を合わせずに会話を繰り広げる彼らの戯れには、厭世感すら漂う。行き場のない田舎で成長するも事件によってその地を離れて生きる主人公の春日は、日有数のターミナル駅を控えた交通の要所・大宮でひっそりと暮らしていた。 春日が目指した生き方は、読書家としての特別な自分を捨て、群れに紛れる平凡な人生だった。を読まずクラスメイトを軽侮せず、目立たず、かといって孤立せず、新天地で息をするのさえ遠慮するように生きていた。彼は、そんな自分を「からっぽ」だと表現したのである。からっぽ。その発想自体が、すでに周囲の何かしらに満ちている他人とは違う・特別な自分であるという隘

  • 人の涙は黒髪ロングに還る 岩明均「寄生獣」

    人の涙は黒髪ロングに還る 岩明均「寄生獣」 岩明均「寄生獣」 講談社 アフタヌーンKC 全10巻 岩明均 言わずと知れた傑作であり読み継がれる名作、岩明均「寄生獣」を改めて読み返すと、この作品が女性の黒髪に大きな意味を与えていたことに気付かされる(ホントかよ)。 この作品の二大ヒロインと言えば、ひとりが主人公の新一のガールフレンドであるショートカットの里美であるのは論を待たない。そもそもヒロインなんているのかよ、という声を無視してもう一人を挙げるとすれば、他ならぬ田村玲子(あるいは田宮良子。ここでは田村と呼称する)である。 田村は寄生獣・劇中で言うところのパラサイトであり、外見は女性であるが頭は寄生生物である。人間よりはるかに生命力の強い細胞を礎に、そして誰よりも強い好奇心から、田村は昆虫さながらの能で行動するパラサイトでありながら、自分たちの存在意義を問い詰めた。 さらに自分自身

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    dododod 2013/09/09
    ”信子への変形により、彼女は人間としての黒髪ロングを得るのである。”
  • 大今良時「聲の形」 彼女の欲望

    「聲の形」 彼女の欲望 講談社 週刊少年マガジン2013年12号(2月20日発売) 大今良時 今年の2月20日発売の週刊少年マガジン12号に掲載された大今良時の読み切り「聲の形」が話題になって三月が過ぎていた。遅きに失した感もあるが、備忘録替わりに個人的な感想を残しておきたい(なお、「聲の形」は同誌で夏からの連載が決定している)。 さて、簡単なあらすじ。小学校高学年の主人公・石田のクラスに聾唖の少女・西宮が転校してくる。彼女はノートを通してクラスメイトとの交流を希望していたが、石田にとって彼女とのそれは煩雑で面倒で手間がかかるものだった。石田ははっきりと彼女のことが嫌いであると意思表示し、いじめへと発展する。やがてクラス全体で彼女を異物として扱い始めると、いじめは公然のものとなった。だが、学校側にいじめが露見すると、クラスメイトは石田がその首謀者であると主張し、生贄として石田は捧げられた

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    dododod 2013/05/25
    傲慢さ
  • あずまきよひこ「よつばと!」12巻 よつばとひっくり返す

    「よつばと!」第12巻 よつばとひっくり返す メディアワークス 電撃コミックス あずまきよひこ 第80話「よつばとハロウィン」の回で、風香としまうーにかぼちゃの格好をさせられたよつばは、二人に連れられて恵那の友達のみうらの家にやってきた。「トリック オア トリート」と言えば、お菓子しが貰えることに興奮するよつばは、登場したみうらの母にイタズラかお菓子かを迫った。みうら母に「いたずらしていいよ」と言われると、よつばは玄関にあるを「ひっくりかえしてやった」と、次々とひっくり返していく。子どものとてもかわいらしい挿話の一つとして捉えられるわけだが、よつばの参ったか!みたいな顔には、実はこれまでのひっくり返す苦闘の歴史が刻まれているのである! と言うのは大袈裟だけれども、よつばの言動の裏には・「よつばと!」という作品のキャラクターたちの行動原理には、これまで静かに積み上げてきた展開の収束と、そこ

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    dododod 2013/05/13
  • 相田裕「GUNSLINGER GIRL」15巻 偽りの希望

  • 穂積「式の前日」 彼女のモノローグ

    「式の前日」 彼女のモノローグ 小学館 フラワーコミックスα 穂積 「長編漫画は駄作である。」なんて始まる文章を過去に書いたことがあるが、16頁の穂積「式の前日」を読むと、あながち間違ったことは言ってないような気がしてしまう錯覚に陥る程度に、優れた短編だった。方々で評判になっていたようだが、事前にそんなことを知らずに余計な先入観も期待感もなく読めたのは幸運と言えよう。 さて。タイトルどおりに物語は結婚式の前日から始まる。縁側で横になっている若い男性のモノローグが物語の情報源となっており、「明日 結婚する」という最初の言葉が物語の全てを決めたといっても過言ではない。「社会人三年目」という言葉により、若いな……と思いつつ、男女のささやかな一日をのんびりと見守ることになる。16頁ゆえに、その余韻も一瞬かもしれないが、作は再読する楽しみが残されているのだから、むしろ余韻が編と言える。そして、

  • 思春期の煩悩は黒髪ロングに淀む 谷川ニコ「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」1~2巻

    思春期の煩悩は黒髪ロングに淀む 谷川ニコ「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」 スクウェア・エニックス ガンガンコミックスオンライン 1~2巻 谷川ニコ 女性の容姿の特徴の捉え方として、髪型が挙げられる。たとえば、ある女子高生の容姿を第三者に伝えようとした場合、それはショートなのかロングなのかが重要視される。ショートならば活発な女性を・ロングならば清純な女性を各々想起するとしたら、それは極めて正しい反応といえよう。ステレオタイプは想像力を補う上で重要なキーワードになりえるからである。 マンガのキャラクターならば、ある程度の典型にのっとったキャラクター造形が一つの面白みとなる。黒髪ロングの女性キャラクターであるならば、読者の期待をいい意味で裏切る性格を付け加えることで奥行きが生まれるだろう。ツンデレ、ヤンデレといった見た目とのギャップをひとつの面白さとして作り上げる例が示すように、

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    dododod 2012/09/10
    ”では、彼女の劇中の惨めな姿は、何によって強調されているだろうか? それが黒髪ロングなのである。”
  • 羽海野チカ「3月のライオン」第7巻 おはよう、ちほちゃん

    「3月のライオン」第7巻 おはよう、ちほちゃん 白泉社 JETS COMICS 羽海野チカ 「3月のライオン」7巻を読んで複雑な気分になった。 主人公の棋士・桐山零が世話になっている三姉妹の次女・ひなが通う中学校では、ひなの幼馴染・ちほがいじめられたことで転校してしまう事態にまで発展して、なお続いていた。次の標的にされたひなは、クラスの中から孤立しつつも、零との絆を深め、また姉のあかりや新しい担任教師の尽力により「解決」に向かって動き出した…… あるいは、いじめと「戦う」ひなは、いじめグループのリーダー格・高城と対峙し一歩も引くことなく立ち向かった……このような表現をもって語られる7巻のひなのいじめ話は、教師たちがいじめグループを個別に面談し、反省の姿勢をクラスの前で表明される形で一応「決着」となった…… 「3月のライオン」という物語にとって、いじめ問題がどのように結実するのかは不透

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    dododod 2012/05/01
  • 鬼頭莫宏「のりりん」のスピード感

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    dododod 2012/01/24
    漕ぐ描写と擬音
  • 志村貴子「放浪息子」9巻 目を閉じる

    志村貴子「放浪息子」9巻 目を閉じる エンターブレイン ビームコミックス 目を閉じると何も見えない。マンガの場合、コマの中が黒く塗りつぶされ、そこにモノローグやフキダシが入るなんて演出をよく見かける。直感的でわかりやすい表現だからこそ、読者も納得がいく流れだ。「放浪息子」でも、この表現はふんだんに盛り込まれている。 床についたシュウが目を閉じる。次にコマが黒く塗りつぶされてモノローグが被さる。「どきどきするけど もう決めた」。8巻にある一場面だ。腐れ縁とも言える小学生からの級友・土居に「おまえ これ(女装)で学校来いよ」と煽られるように、女装して登校する決意を固める重要なところでもある。それを普通のコマ割で淡々と演出してしまうのが志村マンガの味のひとつなわけだが、次頁の朝の描写もあわせて、コマのつながりが自然すぎるほど自然な流れだろう。そして、同時にキャラクターの心理に一気に接近でき

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    dododod 2009/10/16
    コマの中が黒く塗りつぶされ、そこにモノローグやフキダシが入る演出 について
  • 拝啓 手塚治虫様 第21.5回 相田裕「GUNSLINGER GIRL」試論4 トリエラの涙は希望 | ひとりで勝手にマンガ夜話

    拝啓 手塚治虫様第21.5回 「GUNSLINGER GIRL」試論4 トリエラの涙は希望 試論1はこれ。試論2はこれ。試論3はこれ。 伊藤剛氏は、著「テヅカ・イズ・デッド」のキャラ/キャラクター論の中で手塚治虫「地帝国の怪人」の耳男という主人公の設定が相田裕「GUNSLINGER GIRL」の義体の設定に通じていると触れながら、キャラであることを自覚している義体に「キャラの自律性」を見出し、「GUNSLINGER GIRL」が抱えている矛盾が作品を歪にしているかもしれないとほのめかしている。著書の中の言葉を要約すると、それは、作品のコマ割の変化に見て取れるというのである。稚拙ながらも映画的モンタージュや構図を捉えようとする初期の作画が青年漫画的コマ割に変わり、「5巻目になると、今度は、一転して奇妙な構図が取られ、機能のはっきりしない間白の省略といった、たいへん居心地の悪い表現が前

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    dododod 2009/09/29
    ガンスリ /精緻
  • あずまきよひこ「よつばと!」8巻 よつばとハードボイルド - ひとりで勝手にマンガ夜話

    「よつばと!」第8巻 メディアワークス 電撃コミックス あずまきよひこ 「よつばと!」の背景が1巻から比べて精緻に描かれているようになっている。これには作者の思惑があるのは言うまでもない。すでに「あずまんが大王」から細かな描写を施していく試みはなされており(過去に書いた文章(ここ)で指摘済み)、「よつばと!」の背景の変化もその延長線上にある。 情報の多寡によって読者に伝えたいこと読み取って欲しいことを制御する。作者はこれを描線に求めたのだろう。線の多少による情報操作が背景を緻密にしていったとするならば、背景に読み取って欲しい情報がたくさんあるのか、背景から浮かび上がるキャラクターに注目して欲しいのか……まあそんな難しく考える必要はないんだけど。だってとーちゃんが何故翻訳家なのか?なんてとてもシンプルなんだから。よつばは外国の子→外国に行く機会があり、なおかつ家で仕事出来る職業→翻訳

  • 幸村誠「ヴィンランド・サガ」6巻 王子の顔とリアルな眼

    「ヴィンランド・サガ」第6巻 講談社アフタヌーンKC 幸村誠 単行6巻に至って漸く「ヴィンランド・サガ」が物語のひと山を越えた。正直、長すぎると思っているんだが、それでも面白いんだから仕方ない。 6巻では「プラネテス」では唐突な印象があった「愛」についての問答を、村人の大量虐殺を経て突き詰めていく。王子を護衛するヴァイキング一行は、トルケル軍によって村人たち同様に虐殺の対象にされ、死体は賭けの対象にもされてしまう。自分たちが生きるために殺し尽くした、という4巻の展開から、殺戮はさらに過剰に演出され、娯楽の対象にまでなってしまった。 そんな描写の一方で、王子の悟りが神父との対話によって導かれていく。簡単に言えば、人は生きている限り人を愛することが出来ない、というどうしようもない現実である。神父がこれまで殺戮を見ても戦いを見ても何もしなかったし何もしようともしないのも、愛ゆえの

  • 綱本将也・ツジトモ「GIANT KILLING」5巻 コマの外で選手は動く

    「GIANT KILLING」5巻 講談社 モーニングKC 第5巻 作・綱将也 画・ツジトモ コミティア84で出したオフの一部「「GIANT KILLING」精読 対名古屋グランパレス戦精読」の補足的な文章だけど、それを読んでなくても通じる文章にしたつもり。詳しくはオフ版第2号で(宣伝)。 さて、監督を主人公にしたサッカー漫画「GIANT KILLING」も5巻目。1巻から采配の妙と選手の力を引き出す手腕を見せ付けてきた監督・達海が率いるETUは、初戦の東京ヴィクトリー戦こそ可能性を感じさせる戦いを披露したが、チームの根底にこびりついている負け癖という膿を吐き出すための荒治療のように敗戦を覚悟した戦いを続け、根底たる守備の要・黒田と杉江に守備からはじまるサッカーを悟らせるに至った。 連敗中とはいえチーム状態は上向いていた。そんな中で迎えた名古屋グランパレスとの試合は、ET

  • 拝啓 手塚治虫様 第21回 アンジェリカは思い出を語らない 物語論1-3

    拝啓 手塚治虫様第21回 「GUNSLINGER GIRL」試論3 アンジェリカは思い出を語らない 試論1はこれ。試論2はこれ。さて今回は。 相田裕「GUNSLINGER GIRL」の物語を考える試論の3回目は、前回(2006年4月)は既刊が6巻までだったが、今(2008年3月)は9巻まであり、7巻から9巻までの内容を中心にキャラクターから物語を見ていきたい。 6巻の第二期の義体・ペトラの投入によって物語の雰囲気が変わった。1巻から読み親しんでいる者ならば誰もが感じたはずだ。違和感か・さらなる萌えか受け取り方はそれぞれあるけど、ペトラだけでなくこれまで描かれていたキャラクターまで頭身を伸ばすという大きな転換を図ったのである。少女であることを意識せざるを得ない頭身だったキャラクターが、少し大人っぽく描写されることで、物語にどのような変化が見えるのか。ペトラ前・ペトラ後という区切り

    dododod
    dododod 2008/03/04
    GUNSLINGER GIRL / ペトラ前・ペトラ後