タグ

ブックマーク / www.h2.dion.ne.jp/~hkm_yawa (35)

  • 独りぼっちの匂いは黒髪ロングに溶ける 原作:新海誠 漫画:山口つばさ「彼女と彼女の猫」

    独りぼっちの匂いは黒髪ロングに溶ける 原作:新海誠 漫画:山口つばさ「彼女と彼女の」 講談社 アフタヌーンKC 東京で一人暮らしをする黒髪ロングの彼女がある日橋の下で拾ったとの日々を描く冒頭、穏やかな時間が流れる描写が続く。近くの高架橋を渡る電車の音、鼻歌を唄いながら洗濯物を干し、日向ぼっこをしながらを抱えて読書をする。これら余裕のある描写を散りばめつつ、不意に母親からの電話が鳴った。他愛ない会話なのに、どこか不穏な気配を察するのモノローグが物語を牽引する。そう、この作品の主人公は、彼女ではなくである。 白の彼は、黒髪の彼女とよく映える。夕飯をべるテレビの向こう側からの音だろうか、あるいは彼女の回想だろうか、母親の再婚が話題に上がる。ご飯の美味しさに打ち震える彼女に、その話題は流されたかのように思えたが、の能天気なモノローグがかえって、彼女に忍び寄ってくる孤独感を少しずつ

  • 珈琲「のぼる小寺さん」2巻 輝き

  • アサイ「木根さんの1人でキネマ」1巻 映画は映画館で観るのが当たり前でしょ

  • 新時代の視座は黒髪ロングが明かす 野田サトル「ゴールデンカムイ」1~4巻

    新時代の視座は黒髪ロングが明かす 野田サトル「ゴールデンカムイ」1~4巻 集英社 ヤングジャンプコミックス 日露戦争後の明治末期、北海道を舞台に謎の金塊を巡る三つ巴のサバイバル冒険グルメ活劇が、野田サトル「ゴールデンカムイ」である。 二〇三高地などの激戦をくぐり抜けた「不死身の杉元」こと主人公の杉元とアイヌの少女アシリパ(リは小文字だが、稿ではアシリパと表記することを許されたい)の二人は羆との死闘を機に金塊探しに挑む一方、函館戦争で死んだと思われていたが実は生き残っていたというロマン溢れる誰もが夢想するだろう設定の土方歳三を中心とした蝦夷地独立を目論む輩と、杉元同様に日露戦争に従軍しながら役後報われず北海道で軍事政権を一旗挙げようと暗躍する第七師団の鶴見中尉たち武装集団。一分の隙なく三者の思惑が交錯して死闘を演じ、知略のつばぜり合いとなれば、雄大な自然を背景にしたバトル大作となりそうな

  • ツナミノユウ「蝉丸残日録」1巻 いまを生きる

    「蝉丸残日録」1巻 いまを生きる 講談社 モーニングKC ツナミノユウ ある朝、目が覚めたら蝉になっていたサラリーマン蝉丸の日常を描いてるからと言って、心優しい妹が登場するでなし部屋が物置みたいになるでなし、りんごを投げつけられるわけでもないコメディ漫画が、「蝉丸残日録」である。 蝉になってしまったというわけで、あと一週間しか生きられないと思いきや……それはお約束としても、昆虫の体質になってしまったために、いつ死んでもおかしくないと悟った主人公・蝉丸の、駄目サラリーマンの日々をモノローグを中心に描く作は、毎日が死に際とばかりに、最期の瞬間ばかりを気にして、ろくに仕事をしない蝉丸と、それに振り回される同僚たちの心理を詳細に暴き立てる。 彼らは長く生きられないんだからと気を使い、死んだと思ったら居眠りしてたとか、死んで横たわっていると思ったら自販機の下に転がった小銭を取ろうとしてたり、ベ

    dododod
    dododod 2015/08/24
    かわいさ
  • 海野つなみ「逃げるは恥だが役に立つ」5巻 えへっ

    「逃げるは恥だが役に立つ」5巻 えへっ 講談社 KC kiss 海野つなみ 契約結婚(事実婚)という形で同居する男女を、雇用と労働という視点で描き始めた「逃げるは恥だが役に立つ」が巻を重ねるごとに恋愛模様を濃くしていく展開は、おまえらさっさとやることやっちまえよという突っ込みをしながらニヤニヤ読んでいる読者を増やしたに違いない。就職難から定職に就けず、ひょんな発想から家事代行として・仕事としてのという役割を演じているはずの主人公が、次第に夫という役割の雇用主に惹かれていく。 対話劇を中心としたロジカルな物語のなかにあって、当初あった社会派的な結婚観は、二人が同居する理由を経済的に結び付けていたわけだが、二人が惹かれあえばあうほど、雇用関係が障壁となってしまうのだから面白い。 結婚生活という職場で繰り広げられた二人の関係は、傍から見れば極めて乾いた関係に見えてしまい、実際に同僚の一人に

    dododod
    dododod 2015/05/18
    相互理解
  • 相田裕「イチゴーイチハチ!」1巻 敗者たち

    「イチゴーイチハチ!」1巻 敗者たち 「イチゴーイチハチ!」 小学館 ビックコミックス 相田裕 「GUNSLINGER GIRL」の相田裕の新作「イチゴーイチハチ!」は、同人時代から彼の作品を知る人々のすべからく感ある感想もあるようだが、無知な私には学園物と知って驚かない理由がない。 「GUNSLINGER GIRL」との共通点探しは辞めようと思いながらも、新作の内容が冒頭から受験に敗れた人々が滑り止めに併願した高校が舞台というだけで、もう前作と同じ主題を抱えていることを察したけれども、やはりここは「イチゴーイチハチ!」の面白さについて語るべきだろう。 公立トップの進学校の受験に敗れた高校生たちが通う、通称「松武高校」は、もちろん全員がそれというわけではなく、スポーツも盛んで野球部は甲子園にも出場した過去があり、制服の評判もいい、そういう理由で入学した生徒もいるわけだ。 主人公の丸山

    dododod
    dododod 2015/04/13
    アンダースロー
  • コトヤマ「だがしかし」1~2巻 2巻と言ったら

    「だがしかし」1~2巻 2巻と言ったら 「だがしかし」1~2巻 小学館 少年サンデーコミックス コトヤマ なんかペンギン村を思い出すような懐かしさに惹かれる田舎町を舞台に、毎回8ページという掌編の中で、ひとつの駄菓子を紹介がてら、駄菓子屋の跡継ぎを父から嘱望される主人公のココノツ少年と、父に協力するお菓子会社のご令嬢ほたるのドタバタを中心に描きながら、永遠の夏休みを満喫しているギャグマンガが「だがしかし」である(ペンギン村と言っても、喫茶店がソラマメならぬエンドウ(マメ)ってだけなんだけど……古いネタですんません)。 作のコメディリリーフにして狂言回しとも言えるほたるが物語の牽引役であることに異論はあるまい。美人な彼女のおしとやかそうな容貌からは想起できない、突拍子もないアクションによる登場場面を出落ちにしつつ、翻弄されるココノツと思いがけず披露される駄菓子の薀蓄は、掌編ゆえのテンポの

    dododod
    dododod 2015/03/23
    起承転結/あとかわいい
  • 雨隠ギド「甘々と稲妻」4巻 食卓の欠片

    「甘々と稲」4巻 卓の欠片 「甘々と稲」4巻 講談社 アフタヌーンKC 雨隠ギド 4巻80頁。ああ、そうか。楽しい料理場面が続くので忘れていた。どちらかというと、母を亡くした子の物語という側面が強調されていたように思うし、母のいない子の寂しさを慮る父の物語という展開が主だったように思えたが、裏を返せば、この作品は、を失った男の物語でもあったということを今更思い知らされた。 四角いテーブルを囲む三人の犬塚家。父の隣に子、父の向かい側に母。小皿が並ばれた三人分の卓は、それぞれ分量に差があり、一番べる父、次にべる母、もっともべる量の少ない子のちんまりと盛られたご飯やおかず、そして子ども用のフォークとスプーンが置かれ、おそらくミルクが入ったコップも見える。 副菜を添えようと取り出した小鉢がきっかけで、不意に思い出された過去の絵は、言葉なく、キャラクターの表情もなく、ここで彼が何

    dododod
    dododod 2015/03/18
    4巻最終話いいよね
  • 鳴見なる「ラーメン大好き小泉さん」1~2巻 ずるずる、ふはーっ

    ラーメン大好き小泉さん」1~2巻 ずるずる、ふはーっ 竹書房 バンブーコミックス 鳴見なる 個人的にラーメンべるという行為には、そこはかとない背徳を感じている。べ過ぎは身体に良くないとかいいながら、誰もがその旨さを認め、夜の定番はラーメンと相場が決まっている。あれ、身体に悪いんじゃないの? と思いつつも、インスタントでも構わずにべてしまう。特に困ってしまうのがスープの処理である。麺が減っていくのに合わせてスープもちびちび飲んでいても、どうしても最後に残ってしまう。塩分たっぷり、個人的に健康が気になるお年頃だが、そんな心配も気にせずに完を続けるキャラクターがいる。鳴見なる「ラーメン大好き小泉さん」である。 藤子A御大は小池さんをゴルファーにしたりウルトラでスーパーなデラックスの人にしたりといろいろ弄繰り回したけれども、鳴見なるは小泉さん、池を泉に変える奥ゆかしさでもって、女子

  • 川崎直孝「ちおちゃんの通学路」1巻 世界の果ての通学路・日本編

    「ちおちゃんの通学路」1巻 世界の果ての通学路・日編 メディアファクトリー MFコミックス フラッパーシリーズ 川崎直孝 2014年4月に公開されたフランスのドキュメンタリー映画「世界の果ての通学路」は、4つの国の子どもたちの登校する様子を追ったドキュメンタリー映画である。 ケニアの兄妹は2時間かけて野生の動物たちが闊歩するサバンナを駆け抜ける。モロッコの少女たちは、4時間、山道を歩いて学校に向かう。アルゼンチンの兄妹は、1時間半、毎朝馬に乗って学校に通う。そして、インドの車椅子の少年は、二人の弟に牽引されて1時間半の道のりを登校する。 この映画を鑑賞しながら、日の子どもたちは幸せだねぇ平和だねぇなどとクソみたいな感想しか言えないとしたら、不見識にもほどがあるだろう。彼らは何故、そこまでして学校に通うのか? この映画は、学びの喜びを静かに訴えてくる、優れたドキュメンタリー映画なので

  • 高野雀「さよならガールフレンド」 彼女の本心

  • 羽海野チカ「3月のライオン」10巻 てのひら

    dododod
    dododod 2015/01/21
    ”橋を”
  • たらちねの蚕は黒髪ロングを紡ぐ 雨隠ギド「甘々と稲妻」3巻

    たらちねの蚕は黒髪ロングを紡ぐ 雨隠ギド「甘々と稲」3巻 「甘々と稲」3巻 講談社 アフタヌーンKC 雨隠ギド 高校教師の犬塚は、半年前にを亡くし、5歳の娘を一人で育てているものの、仕事に追われて事はコンビニ弁当や冷凍品頼みの日々である。そんな父子が、ある春の晴れた公園の花見で出会った少女は、小料理屋の娘である女子高生・小鳥であった…… 各所で評判のこの物語も単行が3巻目に突入した。あるいは母を失った父子の物語であり、料理専門家として多忙な日々を送る母とはなかなか会えず、一人で小料理屋を守る娘の物語でもありながら、編を彩るのは、毎回三人が懸命に作って、おいしくべる、日常の中のにあるのは言うまでもない。単行には劇中料理レシピも付いているとなれば、すでに実際に作ってみた方もいるだろう。私も毎回出てくる日常的な料理に、ほくほくしながら面白く読んでいる。 さてしかし前述

    たらちねの蚕は黒髪ロングを紡ぐ 雨隠ギド「甘々と稲妻」3巻
  • 押見修造「惡の華」11巻 旅人

    dododod
    dododod 2014/06/29
    目を閉じる
  • 阿部共実「ちーちゃんはちょっと足りない」 ここを過ぎて悲しみのマチ

    阿部共実「ちーちゃんはちょっと足りない」 ここを過ぎて悲しみのマチ 少年チャンピオンコミックスEXTRA MOTTO! 秋田書店 傑作文学である。 その前に、漫画を文学的と評するときに注意しなければならない点がある。小説漫画より高尚なものという先入観である。誰もが抱きやすい持論あるいは世間一般には当然のこととして受け入れられている前提を排しなければ、漫画を評価することなんて出来ない。 阿部共実「ちーちゃんはちょっと足りない」に冠せられるであろう文学的と言う評価にも細心の注意が必要だ。この作品で語られる主人公の内語は確かに文学的であるが、それはこの作品が小説に匹敵するという意味ではない。小説とか何やらとか表現媒体に依存しない、作品そのものに文学的な躍動感があるのである。 というような前置きを書いたのも、私のこの作品の感想がとかく文学的である点を強調してしまう結果になることを憂うからで

    dododod
    dododod 2014/06/01
    ”建物の描写もキャラクターと齟齬が生じない程度に緻密で描き込みが多く”雑誌から「よつばと」かって思うぐらい背景加筆修正多いのですごい納得した
  • 梅田阿比「クジラの子らは砂上に歌う」1~2巻 希望の味

    梅田阿比「クジラの子らは砂上に歌う」1~2巻 希望の味 ボニータ・コミックス 秋田書店 砂の海に覆われた世界で、泥クジラと呼ばれる漂流船で生活する約500人の人々の日常をのんびりと描いた作品かと思って読み始めたら全然違った、梅田阿比のSF作品「クジラの子らは砂上に歌う」である。「風の谷のナウシカ」を想起させる世界観は、おそらくかつて栄えた文明が砂に埋もれて云々というナレーションがあるからだろうし、いや実際に1巻の終盤に登場する「人形」と呼ばれるキャラクターの造形はナウシカの土鬼(ドルク)族を思い出させもしたわけだが、砂に覆われた世界の物語、という閉じた世界の中で生きる人々を描いていると思っていた私にとって、初読前の印象は、むしろ安部公房の小説「砂の女」を想起させた。 もちろん「砂の女」は、安部公房を世界的な作家に押し上げた名作であり、評論家がこぞって語りつくした作品であり、今更私が書くこ

    dododod
    dododod 2014/05/04
    ”この作品は感情の有無をキャラクターの表情や挙措を丁寧に描き出すことで、物語の起伏を生もうとする。”
  • 鳥山明「銀河パトロール ジャコ」 ペンギン村の死。そして。

    dododod
    dododod 2014/04/16
  • 漆原友紀「蟲師」長文感想 狩房文庫異譚

    漆原友紀「蟲師」長文感想 狩房文庫異譚 」講談社アフタヌーンKC 全10巻 ※稿は、2008年の冬コミで頒布した同人誌をweb公開用に一部訂正した文章である。 目次 序文 1 瞳の向こう キャラクターの目と涙 足元を動かす「天辺の糸」/拡散する意識「隠り江」/生きる涙「旅をする沼」/目に映る水「鏡が淵」/水の息吹「水碧む」 2 水の流れる風の吹かれる 「蟲師」の風景 蟲は居る「雨がくる虹がたつ」/蟲の季節「雪の下」/永遠の影「残り紅」/音の風「錆の鳴く聲」/赤い流れ「囀る貝」 3 白い跳躍 余白・コマの活用 間白の抑圧/間白の解放「筆の海」/マンガの時間 アニメの時間「虚繭取り」/間白からの跳躍「日照る雨」「眼福眼禍」/対話とライン いくつかの例を あとがき 鉦と鈴 序文 「蟲師」はアフタヌーンシーズン増刊及び月刊アフタヌーン誌で1999年から2008年の約10年間

    漆原友紀「蟲師」長文感想 狩房文庫異譚
  • オジロマコト「富士山さんは思春期」1~3巻 人形としてのカンバ視点

    「富士山さんは思春期」1~3巻 人形としてのカンバ視点 双葉社 アクションコミックス オジロマコト 身長181センチの中学二年生の女子バレー部のエース・富士山(ふじやま)の挙措がかわいいこの作品には常に違和感が付きまとっている。うん、富士山さんの可愛らしい表情や艶やかな肢体や豊満な躯体だけを見ているだけでも十分に楽しい。みんなに内緒で幼馴染の身長160センチの上場(かんば)と交際を始めたことから様々な彼女の姿を捉え続ける演出も面白い。彼女のいろいろを引き出し続ける存在として物語の主語を担う上場の活躍・彼の内面の言葉は冒頭から読者の代理然と機能してもいるだろう。けれども、何かしっくりこないのである。何故だろうか。 作の構図の多くを担っている上場の視点は、富士山さんをいろいろな角度から描く動機付けになっている。第1話の下乳から始まった上場の意識は、こっそり彼女を見る視点がそのまま読者自身に

    dododod
    dododod 2014/03/03
    ”この作品が真に萌えているのは、彼女をちらちら見ては彼女を愛おしく思う上場そのものだったからなのだ!”/上場くんは勃起しない