世に出でて花を咲かせた一冊の本の根本には、関わった多くの人間の苦悩と葛藤が埋まっている。それをうかがい知る窓が、あとがきである。 それゆえ、苦悩が大きければ大きいほど、葛藤が深ければ深いほど、あとがきは渋く味わい深いものとなる。 ということで、今回は吉野源三郎の話だ。 自由論 (岩波文庫) 作者: J.S.ミル,John Stuart Mill,塩尻公明,木村健康 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1971/10/16 メディア: 文庫 購入: 16人 クリック: 117回 この商品を含むブログ (58件) を見る 塩尻公明・木村健康訳『ミル 自由論』(岩波文庫、1971年)は珍しく、「訳者あとがき」のあとに、別個に共訳者の「解説」と、さらに別の「あとがき」がついている。さらに珍しいことに、その「あとがき」を書いているのは、担当編集者だった吉野源三郎なのだ。『君たちはどう生きるか』で