“イヌイット社会の基本的社会単位は、世帯である。この世帯を構成する核となるのが夫婦関係である。二〇〇一年の国勢調査によると、アクリヴィク村には七〇組のカップルがいたが、その中で法律的に結婚しているカップルは、四五組である。見方をかえれば、約三六パーセントが未婚のカップル(コモン・ロー・カップル)なのである。 一九八〇年代半ばには、コモン・ロー・カップルの割合はもっと高かったが、キリスト教の教義にしたがい正式な結婚をするイヌイットが増えている。イヌイットは、一〇歳代半ばでボーイフレンドやガールフレンドの親のところで同棲生活を開始する場合が多い。何年か同棲し、子供ができた後で、正式に結婚する人が多い。したがって、イヌイットの教会での結婚式は子連れで行われることが多い。同棲をはじめる年齢は一〇歳代半ばと低いが、結婚時の平均年齢は三〇歳を超えているようだ。 イヌイットの結婚についての考え方は複雑で