“こうして分かりやすい図形、コントラストの効いた彩色への努力の積み重ねによって、紋章は抜群の識別性を維持してきた。図41は現在でも使われている船舶用の国際信号旗であるが、すべて紋章の分割図形やオーディナリーズの中から図形を選んだものであり、紋章図形の優れた識別性という特質をフルに活用したものであることが分かろう。また一般には気付かれていないようであるが、競馬の旗手がレースのときに着用している派手な上着の模様も、すべて紋章の分割図かオーディナリーズであり、これらの図形が渾然一体となって走り抜ける各馬の順位の識別にきわめて有効であるからにほかならない。そして現在の各国の国旗も、九九パーセントが紋章の分割図形とオーディナリーズを利用しているのも、紋章図形の優れた識別性の現れといえる。”