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ブックマーク / honz.jp (47)

  • 『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』著者、小林照幸にあの頃のこと訊く - HONZ

    死の貝:日住血吸虫症との闘い (新潮文庫 こ 28-2) 作者: 小林 照幸 出版社: 新潮社; 文庫版 発売日: 2024/4/24 小林照幸『死の貝 日住血吸虫症との闘い 』(新潮文庫)が注目されている。4月24日に上梓されて以来、現在4刷、累計2万6千冊のスマッシュヒットだ。26年前の1998年に出版されたが、なぜいまこんなに注目を浴びているのか。以前より小林照幸のを”激推し”してきた東えりかと、医学者・仲野徹が話を聞いた 仲野 『死の貝』は昔読んだ記憶があったけれど、文庫化されたのも20年以上時間が経ってからだし、こんなに注目されることってある?と不思議になりました。どうして突然文庫化されたんですか? 小林 それは新潮社さんからご説明頂きましょうか。 編集部 もともと新潮社の営業部と未来屋書店で、月に一回、情報交換の定例会議をしています。そのなかで女性書店員さんが「そういえ

    『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』著者、小林照幸にあの頃のこと訊く - HONZ
  • 『宗教の起源──私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』 ダンバー数、エンドルフィン、共同体の結束 - HONZ

    ロビン・ダンバーは、彼が提唱した「ダンバー数」とともに、その名が広く知られている研究者である。ダンバー数とは、ヒトが安定的に社会的関係を築ける人数のことであり、具体的には約150と見積もられている。ダンバーは、霊長類各種の脳の大きさ(とくに新皮質の大きさ)と集団サイズの間に相関関係があることを見てとり、ヒトの平均的な集団サイズとしてその数をはじき出したのであった。 さて、そんなダンバーが書で新たな課題として取り組むのが、「宗教の起源」である。人類史において、宗教はどのようにして生まれ、どのように拡大を遂げていったのか。宗教に関する広範な知識に加えて、専門の人類学や心理学の知見も駆使しながら、ダンバーはその大きな謎に迫っていく。 ダンバーも言及しているように、現生人類の歴史のなかで、宗教は個人や社会に対していくつかの利益をもたらしてきたと考えられる。その代表的なものを5つ挙げるとすれば、(

    『宗教の起源──私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』 ダンバー数、エンドルフィン、共同体の結束 - HONZ
  • 『明治 大正 昭和 化け込み婦人記者奮闘記』化け込み=潜入取材ルポ 型破りな女性記者たちの物語 - HONZ

    2022年度の新聞・通信社における女性記者の割合は男性の4分の1弱である(一般社団法人日新聞協会調べ)。放送業界は多少マシな気もするが、それでもメディアが圧倒的に男性中心であることは変わらない。現代ですらそんな体たらくなのだから、戦前なんて推して知るべし。女性記者(当時は「婦人記者」といった)は各社片手で数えられるほどしかいなかった。 婦人記者という新たな職業が生まれたのは、明治20年代だという。女性読者の増加に伴い、女性向けの記事が求められ、東京や大阪の有力新聞が女性を採用するようになった。 とはいえ、のっけから婦人記者が活躍できたわけではない。女性向けの記事といっても、アイロンのかけ方、シミの抜き方といった家政記事か、政治家や実業家のお宅に赴き、奥様方に普段の生活や子どもの教育法などについてインタビューする名流婦人訪問記などがメインだった。 「号外に 関係のない 婦人記者」と当時の川

    『明治 大正 昭和 化け込み婦人記者奮闘記』化け込み=潜入取材ルポ 型破りな女性記者たちの物語 - HONZ
  • 科学はいまだに法律に導入されない 『人を動かすルールをつくる──行動法学の冒険』 - HONZ

    作者: ベンヤミン・ファン・ロイ,アダム・ファイン 出版社: みすず書房 発売日: 2023/5/18 わたしたちは法律や条例などのルールに囲まれて生きている。そして、それらの多くがわたしたちを深刻な危害から守ってくれていることは間違いない。だがその一方で、何らかの理由でルールがうまく機能していない場合も少なくない。ほとんどのドライバーが守っていない、ある道路での速度制限。日々新たに報じられる、企業のコンプライアンス違反。では、そうした一部のルールがあまり守られないのはどうしてだろうか。 書はその問題に真正面から挑んだものである。ただし、その挑み方は従来のものとは異なる。書は、「どうして人はルールを守らないのか」と問うたりはしない。そうではなく、人に一定の行動傾向があることを前提として、「どうして法的ルールは人の行動を改善できないのか」と考えるのである。 わたしたちには一定の行動パター

    科学はいまだに法律に導入されない 『人を動かすルールをつくる──行動法学の冒険』 - HONZ
  • 『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』書けなくなった批評家を救ったもの - HONZ

    ひさしぶりに会った知人の変貌ぶりにショックを受けることがある。書を書店で見かけた時の驚きもそれに近い。表紙の男性と著者名が一瞬つながらず、人だと気づいて衝撃を受けた。別人のように痩せている。それも何か大病を患ったことをうかがわせるような痩せ方ではないか。 90年代からゼロ年代を通じた福田和也の活躍ぶりは、まさに「飛ぶ鳥を落とす勢い」という言葉がぴったりだった。「月300枚書く」と人が言っていたように、文芸評論や時事評論、エッセイ、コラムを書きまくり、ワイドショーのレギュラーコメンテーターを務め、文芸誌『en-taxi』を編集し、母校である慶應大学の教壇にも立った。当時、夜の街でもしばしば著者を見かけた。バリバリ仕事をしつつ遊びもこなす姿が眩しかった。 著者を知ったのは学生時代のことだ。江藤淳に才能を見出されたというふれこみで、雑誌『諸君!』でいきなり連載が始まった。破格の扱いだった。

    『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』書けなくなった批評家を救ったもの - HONZ
  • 数多の「健康で、長生きする」実践的なメソッドが全部まとまった一冊──『科学的エビデンスにもとづく 100歳まで健康に生きるための25のメソッド』 - HONZ

    数多の「健康で、長生きする」実践的なメソッドが全部まとまった一冊──『科学的エビデンスにもとづく 100歳まで健康に生きるための25のメソッド』 近年、栄養環境の改善や医療技術の進歩によって人間はより長く生きることができるようになった。ただ、ほとんどの人が望んでいるのは、「長く生きる」ことだけでなく、同時に「健康で」あることだろう。糖尿病などの慢性疾患を発病して、永続的な治療が必要ないのであれば、それが幸いである。 そうした状況と科学の進展も合わさってか、『LIFESPAN: 老いなき世界』など、近年「健康に、長生きする」ことにフォーカスしたが多数出るようになった。書『100歳まで健康に生きるための25のメソッド』は、そうした数多ある健康長寿のメソッドを、詳細な科学的エビデンスと共にすべてまとめ、それを実践するために何をしたらいいのかのレクチャーまでしてくれる、実践的な「健康に、長生き

    数多の「健康で、長生きする」実践的なメソッドが全部まとまった一冊──『科学的エビデンスにもとづく 100歳まで健康に生きるための25のメソッド』 - HONZ
  • 『最悪の予感』穴だらけのスライスチーズ - HONZ

    作者:マイケル・ルイス ,Michael Lewis 出版社:早川書房 発売日:2021-07-08 世界最大の「コロナ敗戦国」になったアメリカ。新型コロナウイルスの感染者数は3440万人。死亡者数は61万人を超えた。これは第一次世界大戦と第二次世界大戦、そしてベトナム戦争で亡くなった死者の合計よりも多い。CDC(疾病予防管理センター)やトランプ前大統領が楽観的だったこともあり、初期対応がまずかったのは間違いない。しかしアメリカは新型コロナウイルスに対して無策だったのか?実はそうではなかったのだ。 アメリカで感染者が出始めた頃に、パンデミックを予期し、対策を立案して、コロナ禍を戦った知られざる英雄たちがいた。そんな彼らの活躍と、アメリカのコロナ対応の失敗を描いた物語が『最悪の予感 パンデミックとの戦い』だ。著者は『マネー・ボール』や『世紀の空売り』など、数々の傑作ノンフィクションを生み出し

    『最悪の予感』穴だらけのスライスチーズ - HONZ
  • ヤクザに非常識と言われた男が書く『喰うか喰われるか 私の山口組体験』 - HONZ

    いまから15年ほど前のこと、「週刊現代」編集部に戻って、まっさきに執筆を依頼したのが溝口敦さんだった。そのときの様子を、溝口さんは自伝的ノンフィクション『喰うか喰われるか 私の山口組体験』(5月13日刊、講談社)でこう書いている。 二〇〇六年三月、講談社の加藤晴之さんに会ったとき、彼から「細木数子について四回くらい連載できないか」といわれた。彼はこの年の二月、「週刊現代」の編集長に就いたばかりだった。 細木数子に特別関心があるわけではなかった。何か目障りな女がいるなぐらいの認識で、テレビで彼女が登場する番組に出合うと、チャンネルを替えていた。彼女を見る気がしなかったのだ。 当時の細木数子は、自ら考案したという占星術と、「地獄に落ちるわよ」「あんた死ぬわよ」など啖呵売のような喋りで人気者となり「視聴率の女王」の異名をとるテレビタレントだった。だが業界筋では、陽明学者で政界のご意見番・安岡正篤

    ヤクザに非常識と言われた男が書く『喰うか喰われるか 私の山口組体験』 - HONZ
  • 薬物依存症のイメージが根底から覆されたぞ『誰がために医師はいる クスリとヒトの現代論』 - HONZ

    『誰がために医師はいる クスリとヒトの現代論』(みすず書房)は、アディクション(嗜癖障害)治療を専門とされる松俊彦医師によるだ。少なくとも私にとってはかなり衝撃的な内容だった。薬物依存に抱いていたイメージが大きく覆された。ほとんどの人も、読めばきっとそうなるだろう。 自伝的な語りを軸に、経験に基づいた考えが綴られていく。自ら進んだ道ではない、「左遷」かとも思えるような命令により依存症専門病院に赴任させられたことがきっかけだった。そこで出会った強面の覚せい剤依存症患者に「クスリのやめ方を教えて欲しい」と言われたことが出発点になった。 松医師の基的な考えは「覚せい剤というのはそんなに悪い薬物なのか」ということにつきる。「覚せい剤は幻覚や妄想を引き起こし、暴力事件を起こす。だから危険なのだ」という一般的な考えは、「薬物使用者を危険な精神病者としてゾンビやモンスターのように描く薬物乱用防止

    薬物依存症のイメージが根底から覆されたぞ『誰がために医師はいる クスリとヒトの現代論』 - HONZ
  • 『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』「暗黒時代」という神話はなぜ生き残ってきたのか - HONZ

    「中世ヨーロッパ」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。「疫病と飢饉」、「魔女狩り」、「異端審問」……。代表的なものを挙げたが、いずれにせよ、西ローマ帝国が滅んだ5世紀末からの約1000年間に明るく進歩的な印象を抱く人は少ないだろう。 だが著者は、そうしたネガティブなイメージはここ200年ほどの間に私たちに植え付けられた誤解だと説く。書には、中世に関する11の「フィクション」が登場する。多くの人は、どれも一度は耳にしたことがあるはずだ。 中世の人々は地球が平らだと思っていた。風呂にも入らず、暮らしは不潔で腐った肉も平気でべた。教会は科学を敵視し、今では誰も疑うことのない説も教会の権威によって迫害され続けた。何の罪もない女性たちが何万人も魔女として火あぶりにされた。 これらの説は、文化上構築された「中世」にすぎず、前世紀までに歴史学の専門家によって否定されている。だが、今でも大きな顔をして

    『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』「暗黒時代」という神話はなぜ生き残ってきたのか - HONZ
  • 『アルツハイマー征服』圧倒的な取材力と筆力で読ませるサイエンス・ノンフィクション! - HONZ

    書のプロローグは、「青森のりんごの形が良いのは、季節ごとに、こまめに手当てをするからだ」という、青森在住のわたしにとっては、不意を突かれる一文ではじまります。 なぜ、アルツハイマーので、青森のりんごなのか? その理由はすぐにわかりました。青森には、家族性アルツハイマーの大きな一族があるというのです。長身で美男美女の多いその一族は、おそらくは結婚相手に困ることはなかったのでしょう、よく繁栄したといいます。しかしどういうわけか、四十代、五十代になると、おかしなことが起こる。二戸陽子さん(仮名だそうです)の身にも、それが起こります。四十歳になる頃からりんごの作業ができなくなり、やがて、りんごの収穫期に、りんごの実ではなく、葉っぱを摘んで持ち帰るようになる。すると一族の人たちは、こうささやきあったそうです。「これはまきがきたのかもしれない」 ここでわたしはまたしても、ドキッとしました。「まき」

    『アルツハイマー征服』圧倒的な取材力と筆力で読ませるサイエンス・ノンフィクション! - HONZ
  • これは民主主義崩壊への序曲なのか 『公文書危機』 - HONZ

    昨年、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞を受賞した、毎日新聞の好評連載「公文書クライシス」。書はその取材班が、取材の手の内を明かしながら、ふたたび公文書の闇を照らし出したレポートである。記者たちは今なお取材を続けており、その追及は凄みを増している。記事を読んだ方にも、間違いなく一読の価値があるといえる。 またもう一つ、書の大きな読みどころとなっているのが官邸と記者との生々しいやりとりだ。さすが、記者の手でまとめられた文章だけあって、構成と筆致が素晴らしい。森友や加計、桜を見る会の問題で、公文書に対する疑心暗鬼が生じている私たちにとって、今まさに読んでおくべき一冊だ。いきなり結論めいて恐縮だが、その現状について書にはこう書いてある。 公文書管理法は第1条で「公文書は健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用しうるもの」と定めている。つまり、

    これは民主主義崩壊への序曲なのか 『公文書危機』 - HONZ
  • 『習慣の力〔新版〕』変えるためのコツは、意外とシンプル - HONZ

    自分でコントロールしていくものか。やむをえず染みついてしまうものか。 習慣ときいてまずイメージするのは後者だ。飲酒に喫煙、浪費癖。ちょっとした空き時間とか退屈を感じた時にまずスマホ、みたいなのもそのひとつだろう。後からいかんと思いつつも、ときにはほぼ無意識のうちにやってしまう習慣の数々。自分自身、いちいち思い返したくないくらい心当たりがある。 かといってただ我慢すると反動がくることも。すぐ読むもの以外買わない生活を続けようとしたものの、気づけばAmazonプライムデーのセールでポチりまくって結局チャラに(これは3日前の自分)。習慣というのは当にままならない。 前者の世界(理想)に生きたくても、なかなかそうはいかない。でもしくみを知って、ままならないなりに多少抵抗したい。そんな人たちのための一冊だ。アルコールやニコチンといった定番から、爪を噛む癖まで。さまざまな例とともに、習慣のしぶとさ、

    『習慣の力〔新版〕』変えるためのコツは、意外とシンプル - HONZ
  • 新自由主義のまっただ中で犬死にしないための方法序説『武器としての「資本論」』 - HONZ

    マル経=マルクス経済学が復活の兆しらしい。そんな話を、半年ほど前、内田樹先生から聞いた。なんでも、石川康宏氏との共著『若者よマルクスを読もう(略称:若マル)』シリーズがけっこう売れているというのだ。それだけだと、ふ~ん、という感じなのだが(ウチダ先生、ごめんなさい)、経済学がご専門の先生も同じことをおっしゃっていた。 マルクス主義に基づいた社会主義国家がことごとく失敗に終わったのにどうしてなんですか、という超ド素人質問に対する二人のお答えは同じだった。貧困と格差という問題が、形を変えてではあるけれども、カール・マルクスの時代と同じような状況、いや、もっとひどくなってきているからだとのこと。なるほど、何となくわかる。 自慢じゃないが、マルクスについては、資論や共産党宣言を書いてその後の世界に大きな影響を与えたことと、ドイツにいた頃に訪れたことのあるトリアーが生家であること以外は知らない。し

    新自由主義のまっただ中で犬死にしないための方法序説『武器としての「資本論」』 - HONZ
  • 『本を売る技術』本屋における暗黙知がこの1冊に! - HONZ

    書店員の仕事にはマニュアルがなく、口伝や仕事を盗んで覚えるしかないと言われてきた。そんな中『を売る技術』というが売っていたので買ってみたところ、書には自分が書店員になったときに口伝で教わったことや、誰からも教わることなく、働いていた間にトライ&エラーを繰り返して、最適解だと思ってやっていた技術が書かれていた。書を読み終えたとき、書店員になったときに、このがあれば、あんなに苦労しなくても済んだのに!という思いが強く残った。 書店を辞めてから5年近くが経ち、だんだん書店員時代の記憶もうすれつつある。自分が書店員時代に見聞きした、書店における暗黙知のようなものが、書には論理的にまとめられていた。ここまで書店員の仕事を論理的に書いてあるはいままで見たことがない。とりあえず全書店員は書を教科書のように読んだらいいと思う。加えて、10年間書店員として働いていた際、自分が意識していたこと

    『本を売る技術』本屋における暗黙知がこの1冊に! - HONZ
  • 『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス いまからおよそ1万年前、人類は農業を発明した。農業が生まれると、人びとは必要な栄養を効率的に摂取できるようになり、移動性の狩猟採集生活から脱して、好適地に定住するようになった。そして、一部の集住地域では文明が興り、さらには、生産物の余剰を背景にして国家が形成された──。おそらくあなたもそんなストーリーを耳にし、学んだことがあるだろう。 しかし、かくも行き渡っているそのストーリーに対して、書は疑問符を突きつける。なるほど、初期の国家はいずれも農業を基盤とするものであった。だが、人類はなにも農業を手にしたから定住を始めたわけではない(後述)。また、メソポタミアで最初期の国家が誕生したのは、作物栽培と定住の開始から4000年以上も後のことである。それゆえ、「農業→定住→国家」と安直に結び

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ
  • 麻酔で意識が落ちた時、何が起こっているのか──『意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか』 - HONZ

    麻酔で意識が落ちた時、何が起こっているのか──『意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか』 歴史、特に最悪の医療の歴史などを読んでいると、あ〜現代に生まれてきてよかったなあと、身の回りに当たり前に存在する設備や技術に感謝することが多い。昔は治せなかった病気が今では治せるケースも多いし、瀉血やロボトミー手術など、痛みや苦しみを与えるだけで一切の効果のなかった治療も、科学的手法によって見分けることができるようになってきた。 だが、そうした幾つもの医療の進歩の中で最もありがたいもののひとつは、麻酔の存在ではないか。正直、麻酔のない世界には生まれたくない。切ったり潰したりするときに意識があるなんてゾッとする──現代の医療に麻酔は絶対絶対必須だ。そのわりに、患者に麻酔を施す麻酔科医の仕事は光が当たりづらい分野である。何しろ実際に手術や治療を担当することはめったにないから、麻

    麻酔で意識が落ちた時、何が起こっているのか──『意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか』 - HONZ
  • 『チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学』緩くつながり、ときに裏切り、香港で見たアングラ経済の姿 - HONZ

    『チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学』緩くつながり、ときに裏切り、香港で見たアングラ経済の姿 香港の中心街に立地するチョンキンマンション。安宿が密集するこの建物は、沢木耕太郎の『深夜特急』に登場したこともあり、今でも日からの旅行客を引きつけている。 2016年に香港の大学に客員教授として所属した著者は、ひとりのタンザニア人、カラマと知り合う。彼は「チョンキンマンションのボス」と名乗った。 「ボス」の日常は怪しさに満ちあふれていた。毎日、昼ぐらいに起き、夜な夜な仲間とたむろ。仕事は中古車ブローカー。インターネットを使って母国と香港の業者の取引を仲介している。大して働いている様子はないものの、月に数万ドル稼ぐこともある。 経済人類学者の著者が彼らの商慣行や起業家としての側面に関心を寄せるようになったのは自然の流れだった。書は国家の制度などに守られない彼らがいかに自

    『チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学』緩くつながり、ときに裏切り、香港で見たアングラ経済の姿 - HONZ
  • 『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない - HONZ

    スティーブ・ジョブズは自分の子供たちにiPadを使わせていなかった――彼はその影響力をもって世界中に自社のテクノロジーを広める一方で、プライベートでは極端なほどテクノロジーを避ける生活をしていた。デジタルデバイスの危険性を知っていたから。彼だけでなく、IT業界の大物の多くが似たようなルールを守っている。まるで自分の商売道具でハイにならぬよう立ち回る薬物売人みたいではないか……。 そんなツッコミで幕を開ける書は、フェイスブックやツイッター、インスタグラム、ソーシャルゲームといったデジタルテクノロジーが持つ薬物のような依存性をわかりやすく噛み砕いて分析した一冊である。ネット依存を題材としたは他にもあるが、書が類書とちょっと違うのは、こうした依存症ビジネスを否定・糾弾するのではなく、人間心理への深い理解を促すことに重心が置かれている点だ。著者はニューヨーク大学の行動経済学や意思決定の心理学

    『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない - HONZ
  • 『恐竜の世界史──負け犬が覇者となり、絶滅するまで』 失われた世界の新たな歴史 - HONZ

    そこに描かれている恐竜の姿に圧倒されつつ、胸をワクワクさせてページを繰った子どもの頃。そのワクワク感を思い起こさせてくれるような快著である。 2010年代に描かれる恐竜は、かつてわたしたちが見聞きした恐竜とはまるで異なっている。というのも、恐竜にまつわる研究がこの20年ほどで著しく進展し、恐竜のイメージが大きく書き換えられたからだ。驚くなかれ、たとえば新種の恐竜は、平均して週に一度のペースで発見されているのだという。書は、そうした研究の進展を背景にして、気鋭の若手研究者が新たな視点から「恐竜の世界史」を再現しようとしたものである。 よく知られているように、恐竜は三畳紀、ジュラ紀、白亜紀といった地質年代を生きていた。だがじつは、従来のイメージとは異なり、恐竜はすぐさま生物界の覇者にのしあがったわけではない。三畳紀(とくにそのうちの2億3000万年前~2億100万年前)の恐竜は、それほど大型

    『恐竜の世界史──負け犬が覇者となり、絶滅するまで』 失われた世界の新たな歴史 - HONZ
    doycuesalgoza
    doycuesalgoza 2019/08/12
    読みたくさせる書評。