■係長の意見ばかりでいいのか 「係長がいきなり社長になったみたいなもんやから、目配りが利かんのは仕方ないが、だったら社長になったらあかんのや」 倉敷紡績の元会長、真銅孝三氏が盛んに責めるのは、菅直人前首相のことである。東京電力福島第1原発の事故で過敏な反応をするなど、東日本大震災でのリーダーシップには問題が多々あったが、真銅氏が問題視するのは、自衛隊の最高指揮官として震災発生直後、動員人数を「もっと出せ」の一辺倒で逐次投入していったことだ。 「同じころ、在日米軍の司令官らは中国や北朝鮮、ロシアの動向を見極めて、備えを残した上で『トモダチ作戦』への投入兵数を決めた。どんな状況でも全体像を見失わない。目の前の事象に心を奪われない。それがリーダーの仕事というもんや」 真銅氏の言葉は、目の前の事象に心を奪われて大局を見誤りやすい凡人の性(さが)を指摘したものでもある。ひょっとしたら、その愚のために