【左巻き書店 夏のブックフェア】 この夏、ネトウヨに読ませたい三冊(2)常態化する人肉食い、吹っ飛ぶ倫理 わが左巻き書店の、ほんとうの戦争を知るためのブックフェア。前回は、結城昌治『軍旗はためく下に』(中公文庫)での、戦友を殺し屍肉を食ったシーンを紹介したが、戦争中の人肉食に文学的テーマの焦点をあてた作品さえある。それが『野火』だ。 『野火』(新潮文庫)は、作者である大岡昇平がフィリピンでの戦争体験をもとに書いた小説。戦争末期、敗北が必至の状況下で主人公が飢えを抱えて原野を彷徨する様を描いている。 結核を患っている主人公・田村が分隊長に部隊を逐われるところから話は始まる。 「中隊にゃお前みてえな肺病やみを、飼っとく余裕はねえ。…病院へ帰れ。…どうでも入れてくんなかったら―死ぬんだよ。手榴弾は無駄に受領してるんじゃねえぞ。」 しかし、田村は病院が受け入れてくれないことを知っていた。なぜなら「