竹富町史の「島じま編」シリーズは、すでに竹富島編、小浜島編、新城島編が刊行されており、本書は同シリーズの4冊目である。700ページ余の大著であり、既刊のものと同様に、島の歴史をまるごと記録化するという関係者の意気込みが伝わってくる。 本書を通読してあらためて思ったのは、竹富町史「島じま編」刊行の意義、すなわち歴史資料や民俗資料を各島ごとに1冊にまとめることの重要性についてである。歩んできた歴史が島ごとに固有であるのは当然のことだし、民俗の地域差として捉えられる島ごとの民俗の特徴は、地域間に共通する要素の存在とともに、民俗学的比較研究が成立する根拠になる。本書で確認できた、民俗学的議論に有用な資料のいくつかを挙げることにする。 豊年祭のパーレーは、舟を沖合に出して、インヌスク(海の底)からもたらされるユー(豊穣(ほうじょう))を満載してくる儀礼だとされるが、それと八重山の他地域の豊年祭や節祭