礼賛をまとめ上げた“教典” 日本を賞賛した外国人は夥(おびただ)しい数にのぼる。これらを一度にまとめあげた教典のような一冊が黄文雄節で貫かれた。 トインビーからフロイス、ペリー、シドウチらが日本の印象を語り、武士道をほめた。『魏志倭人伝』にさえ(日本の)「婦人淫せず、妬忌せず、盗窃せず、諍訴すくなし」とある。 このたぐいの日本礼賛が延々と一覧できる本書は日本人の自尊心をくすぐる。 アンドレ・マルローは武士道を賞賛し、晩年は伊勢神宮に参拝し五十鈴川で禊(みそ)ぎを受けて「このバイブレーションは何だ」と叫んだ。三島由紀夫にあこがれ、切腹という名誉を重んじる儀式を賛美したが、マルローの対極にいた左翼知識人のサルトルさえ三島についてこういった。「ぼくは彼の手を握った。握ったあの手で彼が切腹したと思うと感慨が深い。切腹するには勇気がいる」 黄さんの執筆動機は「東日本大震災」直後から発揮された、日本人