アザラシというと一般的には、浜辺や氷上に横たわってごろごろしているイメージだろう。それは実際その通りであって、南極のウェッデルアザラシであれば南極の氷上で、北海道のゼニガタアザラシであれば沿岸の岩場で、まるで置物のようにじっとしたまま長い時間を過ごしている。 けれどもアザラシの中には数カ月あるいは半年以上もの間、一度たりとも上陸せずに、ひたすら泳ぎ続ける種類がいるのをご存じだろうか。たとえばカリフォルニアの浜辺で子育てをするキタゾウアザラシは、1年のうちのじつに10カ月間を、ほとんどマグロのように太平洋を泳ぎまわって過ごしている。 ここで素朴な疑問。このように長時間上陸しないアザラシは、いつ、どのように休んでいるのだろう? その答えを私はいまから10年近く前、大学院生としてバイカルアザラシの調査をしていた折、思いがけずに発見した。予想もしていなかったその結果に、当時の私は心底驚き、興奮した