2018年4月6日 法眼吉彦*1 大熊亮一*2 全文 [PDF 1,518KB] 要旨 本稿では、ラーニングによって長期インフレの予想形成を行う経済理論モデルを用いて、過去半世紀の日本の長期インフレ予想を推計するとともに、同予想の2%へのアンカー度合いを計測する。推定されたモデルによれば、日本の長期インフレ予想は、1980年代後半に2%程度まで低下し、1990年代半ばまで2%にアンカーされていた。ところが、1990年代後半に2%を下回って低下し、2010年代の初め頃までアンカー度合いは低い状況が続いた。2013年前半における2%の「物価安定の目標」や量的・質的金融緩和の導入を契機に、長期インフレ予想は2015年前半まで上昇したが、同目標へのアンカーは途半ばにある。さらに、ベクトル自己回帰分析によれば、国内の財・サービス市場におけるマークアップ要因が、1990年代後半以降の長期インフレ予想の