2016年2月24日 宮本弘曉* 全文 [PDF 786KB] 要旨 本稿の目的は量的緩和政策が経済に与える影響を労働市場に着目しながら理論、実証の両面から分析することである。まず、構造型VARモデルを用いて量的緩和政策が日本経済に与える影響を実証的に分析した。分析の結果、量的緩和政策は生産を増加、雇用を拡大、失業を低下させることが明らかとなった。また、量的緩和政策は物価を上昇させる効果がある一方、賃金を押し上げる効果は限定的であることがわかった。具体的には、量的緩和政策は、(1)総賃金の指標である総雇用者所得を増加させるものの、その効果は大きくないこと、(2)一ヶ月あたりの現金給与総額を増加させるが、賃金の基調を表す所定内給与へは有意な影響を与えないこと、(3) 労働時間を増加させるが、時給換算した現金給与総額への影響は限定的であることがわかった。この結果は日本では賃金よりも雇用の確保が
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