21世紀に「制作」を再開するために ──ボリス・グロイス『アート・パワー』、中尾拓哉『マルセル・デュシャンとチェス』ほか マルセル・デュシャンの《泉》、2017年はこの男性用小便器がニューヨークの展覧会場に運び込まれスキャンダルとなった1917年から100年めにあたる。既製品をそのまま作品とするレディメイドとして知られ、20世紀美術に最も大きな影響を与えたと言って過言ではないものだが、こうした《泉》を含めたデュシャンによるインパクトの余波はあまりにも大きすぎるがゆえに、もはや現代美術の世界ではひとつの「環境」となっており、これを対象化して捉えること自体が難しい。 デュシャン・インパクトが20世紀以降の美術を不可視な仕方で規定しているとするならば、《泉》100周年という節目を1年間という有効期限つきの単なるスローガンとして消費するのではなく、デュシャン以降の現代美術のありようを改めて捉え直し
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