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ブックマーク / cruel.org (10)

  • Yamagata Column in Voice 2009/02

  • わかりやすさは、ただの表現技術の問題ではないのだ。

    (『ダ・カーポ』(2002 年 4 月, ダ・カーポ)p.21) 山形浩生 いま、日はいろんなところで閉塞感がただよっている。それは各種の領域で、人々が自分のことば世界に閉じこもっているのも一因だ。官僚は官僚語だけで話し、そこから出てこようとしない。外交コミュニケーションの下手さ加減は言うべきにも非ず。オープンなはずの学問の世界まで、変な学閥と権益でタコツボの巣窟だ。それじゃあダメだ。これはすべて、極端な話、わかりやすい説明ができないことからきている。同じことばで、同じ中身が何百回も繰り返されるだけで、それがだんだん腐り、あるいは縮小均衡に陥る――もういたるところで見られる現象だ。もうちょっと各領域に、自分のなわばり外に対してわかりやすい説明のできる人がいれば、これはだいぶ変わるだろう。そう思わないだろうか。そこからもっと何か新しい芽も出てくるだろう。 わかりやすい説明なんて簡単だ。単に

  • クルーグマン「経済学と進化論」

    経済学者は進化理論家から何を学べるだろうか。 What Economists Can Learn From Evolutionary Theorists (ヨーロッパ進化政治経済協会での講演, 1996/11) Paul Krugman 山形浩生 訳 おはようございます。進化論的政治経済を専門にする人々に向かってお話するというので、大いに名誉だと思う一方で、ちょっと不安でもあります。すでにご存じかと思いますが、わたしは進化経済学者というわけじゃ必ずしもありません。自分が多くの人よりも経済学に対するオルタナティブなアプローチには好意的だと思いたいところですが、でも基的にわたしは最大化と均衡を奉じるような輩です。それどころか、多くの場合にはわたしは、標準の経済モデルの重要性を熱烈に擁護する立場にまわります。 じゃあなぜこんなところにきたのか? ええ、理由の一つは、わたしの研究が新古典派パラダ

  • CUT 1999/02- 山形浩生: 科学と文明と好奇心

    またも途上国行脚で、今月はミャンマーにいるのだ。なんでそこに朝永振一郎の『鏡の中の物理学』なんかを持ってきたのかはよく覚えていない。うすい。読みやすい(ついでに安い。たった 466 円だ)。そのくらいの理由だったかもしれない。 朝永振一郎といっても、もうノーベル賞の権威も下がってきたから、知らない人も多いみたい。まあ正直な話、ぼくだって朝永のくりこみ理論ってのがよくわかんないので、五十歩百歩ってところか。でもこのは高校の頃からもう何度か読んでいて、パリティ対称の破れの話と、光の粒子と波動の二重性の話だというのはおぼえていた。でも今回、もう一つだいじな話を見落としていたのに気がついたんだ。人はなぜ科学するのか、という話。そしてそれは、まさに発展途上国、いや全世界の現状と未来にかかわる話なの。 いろんな途上国へいくと、援助でプラントをあげてもうまく動いていなかったりする。もっと目に見えるとこ

  • How to Become A Computer Nerd #02

    ascii.PC 連載 コンピュータのき・も・ち ――あるいは How to be an Computer Otaku 連載第3回:コンピュータの孤独と虚無 (ascii.PC 2001 年8月号) 山形浩生 前回はそもそもコンピュータというものを、初心者に近い一般人がどう認識しているか、という話をした。こう、キーボードとディスプレイが直結しているような感覚が多くの人にはあって、まずそこから一歩退いて、その間にいる何かを認識することがだいじだ、という話。 というわけで、今回はその間のところにじわじわ入っていく。まずはその全体からだ。 コンピュータの気持ちになるのは、実は簡単だ。そのためのカギとなる感情は、疎外感と孤独と虚無だ。これを理解するには、コンピュータってのが実際にどんな状況におかれているかを想像してみるだけでいい。 ちょっとやってみよう。暗い部屋に一人で閉じこめられて、目の前にわけ

  • CUT 1995.08 Book Review

    前回の続き。 民主主義は、今の日人、いやそれどころか世界の先進・中進国すべての人間たちの政治思考を冒している疫病のようなものだ。みんな、一人一票の学級会民主主義だけが唯一無二の理想的政治形態だと信じ込んで、何の疑問もいだいていない。民主主義こそが正しくて、民主主義からはずれているものはすべてまちがっていて、まちがっていればそれは民主主義のせいじゃなくて、正しい民主主義からはずれたためだ、とする連中はどこにでもいる。ソ連東欧の政治経済体制が崩壊したときにも「民主主義じゃなかったからだ」とかいう愚論がとびかったし、ナチが民主主義的なプロセスで政権をとったことを否定するのに血道をあげる連中もわんさかいる。「連中のやったことはまちがっていた。よってそれは、民主主義によるものではありえない」というわけだ。だがもちろん民主主義だってまちがえるし、ナチは政権をとってしまう。みんな、自分の手にした権力の

  • CUT 1995.06 Book Review(「市場制民主主義――選挙権を売ろう!) - 山形浩生

    ねえ T.N. 君。今の民主主義なんて、くだらないと思いませんか。だれもちゃんと、民主主義のあるべき姿なんか考えてないと思う。カンボジアくんだりにでかけてって、原住民に形式的に選挙させて喜んでる連中なんて脳が腐ってると思う。小学校の学級会の水準から一歩も進んでないと思う。だって一人一票とかいうけれど、あのバカの一票と、このおれの一票が同じ価値なわきゃないんだから。そう思ったことのない人間は、そもそも物を考えたことのないバカか、でなきゃよほどの聖人だ。選挙をタレント人気投票と勘違いして、今の某知事みたいな連中を選んじゃうやつらに選挙権をくれてやっていいの? 普通選挙制はまちがってると思う。安易すぎると思う。車の運転にすら、資格試験があるんだよ。なんで二十歳になったくらいで、ホイホイ気軽に選挙権をやっちゃうわけ? ねえ T.N. 君。そう思いませんか。きみの願った普通選挙制のなれの涯てを見て、

  • 感情なき宇宙的必然の中で:スタニスワフ・レムを読む

    (季刊『InterCommunication』2006年夏号) 山形浩生 要約: レムの小説観は非常に狭苦しくとんちんかんであり、おそらくそれはかれの社会性の欠如からきている。レムの作品に一貫するのは人間嫌いと社会の不在であり、それはかれのぶっとんだ小説おもしろさの源泉であると同時に一つの限界でもある。 しばらく前にぼくは、レムの SF 評論のすさまじい偏狭ぶりを指摘したことがある。 一読して驚かされるのは、レムのSF論の異様なまでの堅苦しさと偏狭さ だ。レムにとって正しいSFの方向性は一つ。種としての人類や社会に科学 や知識や進化がどう影響を与えるか、厳密かつ論理的に検討すること。それ 以外は上っ面だけのまやかしでしかない――。 えー、そんな勝手な基準を勝手に作られましてもねえ。(中略)レムのSF 論は、こうしたピント外れな議論だらけで一般性のかけらもない。[8] この意見はいまも変わ

  • Geek Guide for Girls: Japanese

    おたく男は乙女におすすめ A Girl's Guide to Geek Guys ミッキー・ハルピン & ヴィクトリア・マート 久霧亜子 訳 出版者コメント:許可をとらずにこの記事をコピーするでない! 考えてもごらんよ――オリジナリティのかけらもないではないの。しかも、初出の Bunnyhop にリンクすらはらずに、この記事をむしってった連中が何十人もいるんだよ。意地悪してるみたいでいやなんだけどさ、ごめんね。 ――セス 出版者コメントその 2:この記事は、著者たちの見解および経験を述べたもので、誌の見解とは関係ないのだ。さらに、この記事が書かれたのは 1994 年だってのはお忘れなく。ジェインウェイ船長になんで触れてないとか新シリーズのスタートレックなんたらがどうしたとかいうお怒りの手紙を送る前に、そこんとこちょいと考えておくれよね。 ほうほう、女々しく引きずってた、あのザ・サンドボッ

  • Suicide and the Leeches of Society (Japanese)

    死ぬとか死なないとか口走ったりすることには、たぶんちょっとした冒険気分と快楽と、そして安心感がついてまわるんだろう。ああぼくだって、世の中にはほんとうに、死んだほうがよっぽどましなほど劣悪で悲惨な状況に置かれている人がいるのは知っている。ほんとうにバランスがとれなくて、目をはなしたらすぐに首をくくりかねない人がいるのも知っている。そういう人たちはまた話が別だ。でも今回のぼくの話は(そして今回の別冊宝島がたぶん念頭においているのは)、そういう切実な人たちの話じゃない。むしろそういう切実な人たちに対する社会の反応を見て、それと適当に戯れることでなにか達成感を得ている、そういう人たちの話だ。 そういう人たちだって、自分ではそれなりに切実なつもりなんだろう。そして人が切実なつもりである以上、それは切実以外のなにものでもないんだろう。ただぼくには、そういう人たちの一部がいかにもお気楽に見えるし、と

    ethica_emoto
    ethica_emoto 2012/08/17
    なんとなく思い出したので.
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