「つらいことがあったら、これで元気を出しなさい」 そう言って、私が就職のため実家を離れる前日に祖母は私に紙包みを渡した。その中身は、祖母フィギュア(10分の1サイズ)だった。祖母フィギュアはとても精巧で祖母に生き写しの上、腹を押すと「ふえぇぇぇぇぇ」、「チントンシャンテントン、チントンシャンテントン」、「でもそんなの関係ねえ! そんなの関係ねぇ!」、「はい、オッパッピー」と、お笑い芸人・小島よしおの威勢の良い声がランダムで再生されるのだった。 「祖母フィギュアの髪は私の髪を使っているんだよ。ネットオークションに出品なんてしたら、承知しないよ」 初めて渡された際に試しに何度か腹を押してみて以降、祖母の姿形をしたフィギュアから小島よしおの声が再生されるというのは気味が悪いものだから腹を押すことはなく、かといって目に付かないところにしまっておくのも悪い気がして、机の隅に座らせたまま気に留めること