語るたびに内容が変わることでおなじみ、飲むヨーグルト先生の「はつ恋」話をしましょうか。しかし、あれですね。この「はつ恋」という書き方、実にいやらしいですね。なぜ「はつ」だけ平仮名なのかと。そのくせ、絶対に「初こい」とは書きはしないのである。ああ、いやらしい、いやらしい。幼少期のぼくは、そのようないやらしさとは無縁の、愛らしい子供だった。ビスケットを叩いてふたつに増やすという錬金術を知っていたおかげで、街中の子供がぼくを尊敬していた。ぼくの周りには頭の悪い子供しかいなかったので、その程度のことでも魔術師を気取ることができたのである。自慢ではないが、ぼくは何でもできる子供だったのだ。野球をやらせれば、四番以外はやらせてもらえなかったし、もちろんエースピッチャーだった。ぼくが手を叩けば皆が踊りだしたし、ひとたび踊りだしてしまえば、日が暮れるまで誰もそれをやめようとはしなかったのである。あまりにも