日本オリンピック委員会(JOC)の経理部長だった森谷靖氏(享年52)の死から1週間後。あの日と同じ月曜の朝、中延駅のホームに居合わせた乗客たちの記憶は鮮明だった。 「スーツ姿の男性の後ろで電車を待っていました。到着のアナウンスが流れた時、男性は無言で歩み出て足からポンと飛び降りたんです」 付近にいた女性は事前に異変を感じていた。 「男性が私の前を通り過ぎ、しばらくしたらまた戻ってきて隣の乗車位置へとホームを行ったり来たりしていた。今思えば、逡巡する思いがあったのでしょうか」 亡くなった森谷氏 森谷氏が立っていた場所には、茶色い鞄が残されていた。警察も自殺と判断している。ところが――。 「自殺ではない。事故死だ」 6月10日、JOCの山下泰裕会長(64)は、遺族から状況を聞いたとして、記者団にそう言い切った。大切な家族を亡くし「自殺などするわけがない」と考える遺族の気持ちは痛いほど理解できる