呉智英 『犬儒派だもの』 (双葉社) 2003年 犬儒派とは、プラトンと同時代の哲学者ディオゲネスを中心とした一派キニク派の訳語とのこと。 p56 水木しげるの話 (編集の手伝い仕事で)子供の頃ガキ大将だった水木が近所の子供を殴って転校させてしまった話に救いがないので少し修正させようとする話。以下引用 「子供が転校した時、水木さんはどんなことを考えましたかねぇ」 即座に、いとも簡単に水木は答えた。 「何も考えません」 はいそうですかと引き下がったのでは仕事にならない。 「この子供の気持を考えると、心が痛んだとか、転校先の生活が気になるとか、何かありませんでしたか」 またも簡単に水木は答えた。 「ありません」 「どうしてでしょうねぇ」 「自分はドライだったからです」 私は仕事を全うすることをあきらめて、笑い転げた。 * 水木少年の配下に、いつもいじめられているおとなしい子供がいた。しかし、戦