森見登美彦氏は迫り来る締切にそなえて英気を養うため、近所のスーパーで軽やかに買い出しを行っていたが、祖母が実家にて食事中に倒れ、救急車で運ばれたという妹からのメールを受け取った。 慌てて買い物かごを放り出し、登美彦氏は電車に乗った。 そしてガタゴトと暗い夜を抜けて奈良へ向かう途上、「亡くなりました」という報せを受けた。 祖母は夕食の牡蠣ごはんを美味しい美味しいと食べながら上機嫌であったが、ふと「あれ、なんやら、おかしいよう」と呟いて胸を押さえたかと思うと力を失い、それきりであったという。 つい先ほどまで、当たり前に元気にしていた祖母が、ふいっとこの世からサヨナラしたのだと考えると、なんだか哀しさよりも不思議さが先に立つように思われ、登美彦氏は「むーん」と唸った。 登美彦氏は、来週には一度、実家へ戻るつもりであった。 しかし来週には、もう祖母はいないのである。「登美彦氏ご幼少のみぎり、彼はい