「君さぁ、人生楽しい? 自分じゃない誰かになれたら面白いって思わない!?」 映画「名前のない女たち」より ずっと、自分は特別な人間だと思っていた。永い間、つい最近まで。特別運が悪く、要領も悪く、醜くて、恵まれなくて、アタマも悪く、どうしようもなく、人としても女としても駄目過ぎて、上手く生きられない、恋愛や結婚、出産なんて、とんでもない。それどころか生きていちゃ駄目なんだ、間違って生まれてきたんだ、この世に居ちゃいけない人間なんだと。 24歳の時、こちらから懇願して処女喪失をした。自分のような人間に興味を持って相手にしてくれた初めての男だから、この男に見捨てられたくなかった。懇願でもしないと、自分は一生処女のままだろうと縋りついた。処女喪失直後、ホテルで「仕事が上手くいっていない。故郷に戻らないといけない。60万円あれば・・・」とお金の相談を持ちかけられた。故郷には彼の婚約者がいた。私は彼を
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