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2014年1月14日のブックマーク (5件)

  • 遍愛日記 - 87

    獏、離れいてるあいだに何かあったのかしら。なんだか前よりすれたというか、勇者の斡旋業というより、はっきりいって遣り手婆になってしまったみたいよ? どうしたんだろう。あっちの世界も世知辛いのかな。それともお互い好きだなんて言ってしまってもう遠慮がなくなったせいなのか。 自分のことを考えるはずが、獏の微妙なかわりようばかり気になって、集中できない。獏は、私にそのことを話さないとわかっていたから。 「ねえ獏、いったん切るんじゃダメなの? 私の人生のことでしょう? 落ち着いて考えさせて」 「姫香、悠長なこといわないで。あのねえ、携帯電話じゃないんだから、そうはやすやす繋げないのよ。あたしがどれだけ苦労してかけてるのか、それくらい察してくれたっていいじゃない」 もっともな言い分だ。こちらがごめんなさいとくりかえして謝罪すると、獏の気持ちがおさまったらしい。 「それで、どうするの?」 さっきよりは幾分

    遍愛日記 - 87
    florentine
    florentine 2014/01/14
    「でも姫香、貴女にだけは、なにが何でも生き残って欲しいの。ただそれだけ。無意識にでも覚悟があるのとないのじゃ、そのときの対応がちがってくるから。あたし、職権濫用でズルしてるのよね」
  • 歓びの野は死の色す - 3

    ここまで話してきて、アンリさんは顎に手をあてて考えこむような顔をして、問題の石を指差しました。 「その石って、これのことだよね?」 「そうです」 「元に戻ってる……?」 僕は、深くうなずいてから口にしました。 「ジャンは始めから、次の見回りのときには元の場所にあるはずだから心配するなと言ってくれていたのです」 「ああ、そうなんだ。じゃあその通りになってよかったね」 そう言ったアンリさんは僕の顔を見て首をかしげました。 「あれ? エミールは、あんまり嬉しそうじゃないね」 「僕も安心して喜びたいのですが、ジャンが、その次にはたぶんまた移動されてると思うからって、あのしれっとした調子で言うんですよ!」 「あ~、それ、きっと当たってるねえ」 アンリさんには思い当たる節でもあるのか、いったん顎をひいて瞼を伏せ、それから肩を揺らして笑いはじめました。 「やっぱり、当たってますか?」 「学がなくとも農民

    歓びの野は死の色す - 3
    florentine
    florentine 2014/01/14
    皮肉屋でひとを小馬鹿にしてばかりいるジャンが、僕などよりほんとうはずっと優しいということも、我慢強いということも、どんなにか信仰に篤いということも、僕にはまだ、ちっともわかっていなかったのです。
  • 夢のように、おりてくるもの - 20

    依頼人はこどものころの夢を、と願った。それなのに、せっかく彼が来ているのだから、あがないはすぐ隣でなくてもできると知っているよと微笑んで俺を帰そうとした。俺は夕飯後しばらくして病室へ戻った。もちろん彼も笑顔で送り出してくれた。 明け方、右手に香音をとらえた。それはしずかに、それでいて恐ろしいほどまっすぐにこの場を目指しておりてきた。息をひそめて爪弾く。それは若い果実を思わせる馨をまとい、思わぬほどに強く、ドキリとするほど張りつめた高い音を鳴らした。これは、晏だ。そう感じとった瞬間、右手にいくつもの手がこの刻(とき)を待ちわびたように触れていった。俺はじぶんがそれを鳴らしているのか、それとも操られるままに手を動かしているのかわからなくなった。けれど、それはもう、この華やぎに満ちた香音に全身をひたした今はどうでもいいことだった。そう感じたとたん、いくつもの手は気後れのようなやさしさで俺の左手に

    夢のように、おりてくるもの - 20
    florentine
    florentine 2014/01/14
    大量の水にとらわれたのかとおもったが、香音そのもののなかに沈み込んだようだった。魘の重みに溺れるのともまた違う香景が皮膚のすみずみを荒々しく舐めていく。視界樹すらみえない。東が、わからない。
  • The Red Diptych ウィトゲンシュタインの「わかりづらさ」――水元正晴『ウィトゲンシュタイン vs. チューリング』

    水元正晴の『ウィトゲンシュタイン vs. チューリング  計算、AI、ロボットの哲学』を読んだ。  アラン・チューリングと言えば、現状でも継続して使用されているノイマン型のコンピュータと基的原理を同じくするチューリング・マシンを構想したこと、また、人工知能の知性の判断基準であるチューリング・テストを考案したことで、よく知られている。  そのチューリングだが、まさにそれらの仕事を進行させていた時期に、ウィトゲンシュタインの数学の基礎論に関する講義に出席し、直接やりとりもしていたのだと言う(知らんかった……)。そのやり取りを具体的に追ってみると、どうも話がかみ合っていないという印象も強い。……が、ウィトゲンシュタインの主張を詳細に検討してみると、チューリングの影響下に発展したその後の人工知能研究や認知科学の展開で見過ごされていた問題が明らかになっていくのだということを、書は論じてしていく。

  • ウェブニタス -WEBNITAS- : 『ジオニタス』創刊予定:はじめに/原稿募集

    2014年01月13日23:20 『ジオニタス』創刊予定:はじめに/原稿募集 カテゴリ webnitas Trackback(0) ■はじめに 人々を"ジモト"(地元)の呪縛から解放したことは、2000年代のインターネットインフラが達成した偉業のひとつです。わたしたちは日夜ツイッターで全国の人と政治的意見を戦わせ、趣味の感想を述べ合い、日全国、さらには海外の人とつながります。今日では当たり前のようにつながっているけれど、20年前まではありえない事態でした。 人々の新しい交流は、それだけでひとつの新しい文化形態です。人間関係は自由になった。ジモトに縛られた人間関係以外に、交流の選択肢は飛躍的に広がった。 その反面、スマートフォンやパソコンの画面を覗く時間に反比例して、自らがいま足を踏みしめている"この"土地を顧みなくなったのも、平均的に事実でしょう。例えばTVアニメは、インターネットの普及

    ウェブニタス -WEBNITAS- : 『ジオニタス』創刊予定:はじめに/原稿募集
    florentine
    florentine 2014/01/14
    面白そう☆ /「「論」ではない創作も若干募集する。(小説、マンガ、イラストなど紙媒体で表現可能なもの)」また小説で参加させていただきたいです!