読みながら、たびたび思い出したのは長田弘氏の詩だった。思索的でありながら、索漠とした散文ではない、詩心を感じさせてくれる文章なのだ。解説の中でカプシチンスキがほんとうに詩人だったことを知り、納得した。これは詩人の筆になるアフリカ大陸に住む人々に関する優れたルポルタージュであり、エッセイであり、紀行である。ノーベル文学賞候補に挙げられながら、ノンフィクションであることを理由に受賞を逸したという話が伝わるが、おかしな話だ。事実に基づいて書かれようが、一人の人間の眼や耳を通って入ってきた情報を同じ人物が頭や心を働かせて言葉にすれば、そこに現れるのは最早ただの事実の記録ではなく、ひとつの作品である。そういう意味で、これはりっぱな文学作品といえる。それも折り紙つきの。 ルポルタージュといえば、理不尽な状況下にある国家に潜入し、飢餓や差別、貧困にあえぐ住民の姿を記者が報告するといった態のものが多いが、