浅倉くんの第一印象は、こわいから、なるべく近づかない、近づけないようにしよう、だった。 出会ったのは学園祭実行委員の初顔合わせのときのこと。私は当時、大学の学生会の役員で、施設管理局長という役についていた。彼は新入生で学年では二つ、年齢ではいっこ違い。一年留学組のせいか物慣れていて、それなのに触れると肌が削れそうな粗さがあった。 普段はへらへらしていたけれど、それは、紙やすりに無理やりコーティング材をかぶせて修正しときましたから安心ですと言われているようなもので、鋭利ではないぶん厄介で、何かの拍子でかかわると傷が痕に残りそうだと用心した。私の勘は、あたるのだ。 実行委員の割りふりでくじ引きの順番を待つあいだ、たいていの新入生は見知った顔を見分けてひとと話し、または頭を巡らして様子をうかがうなか、彼が黒板を見たのは一度だけ。どこに配属されても話はそれからと割り切っていたようだ。両手をポケット