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ブックマーク / morningrain.hatenablog.com (8)

  • 玉手慎太郎『公衆衛生の倫理学』 - 西東京日記 IN はてな

    新型コロナウイルスの感染拡大の中で、まさに書のタイトルとなっている「公衆衛生の倫理学」が問われました。外出禁止やマスクの着用強制は正当化できるのか? 感染対策のためにどこまでプライバシーを把握・公開していいのか? など、さまざまな問題が浮上しました。 そういった意味で書はまさにホットなトピックを扱っているわけですが、書の特徴は、この問題に対して、思想系のだと必ずとり上げるであろうフーコーの「生権力」の概念を使わずに(最後に使わなかった理由も書いてある)、経済学政治哲学よりの立場からアプローチしている点です。 そのため、何か大きなキーワードを持ち出すのではなく、個別の問題について具体的に検討しながらそこに潜む倫理的な問題を取り出すという形で議論が展開しています。 そして、その議論の過程が明解でわかりやすいのが書の良い点になります。 「これが答えだ!」的な話はありませんが、問題点が

    玉手慎太郎『公衆衛生の倫理学』 - 西東京日記 IN はてな
  •  スヴェン・スタインモ『政治経済の生態学』 - 西東京日記 IN はてな

    副題は「スウェーデン・日・米国の進化と適応」。 「なぜ、同じ資主義諸国であってもさまざまな社会政治制度が存在するのか?」という問題に、「進化と適応」という概念を適応してその答えを探ろうとした。著者はアメリカ政治学者で、税制についての研究などを行ってきた人物です。 個人的に「進化と適応」という概念についてはそれほどピンとこなかったのですが、国際比較のとしては面白いですし、特に「小さな政府」というイメージを覆すアメリカの部分は非常に興味深く読めました。 目次は以下の通り。 第1章 進化と適応の物語―国家の多様性 第2章 スウェーデン―マルハナバチの進化 第3章 日―新旧遺伝子の交配種 第4章 米国―特異な進化を遂げた「強い国、弱い国家」 第5章 「それでも地球は動く」 この手の社会制度を扱っただと、スウェーデンなどの北欧諸国に高い評価を与えていることが多いですが(G・エスピン‐ア

     スヴェン・スタインモ『政治経済の生態学』 - 西東京日記 IN はてな
    florentine
    florentine 2021/07/28
    “日本の女性が「無料で」提供している多くの機能を、スウェーデンでは女性が公的サービスとして提供し、賃金が支払われている点/日本の女性は、スウェーデンの女性と比べて人生の選択肢が限られてしまう”
  •  前田健太郎『市民を雇わない国家』 - 西東京日記 IN はてな

    それは、ある研究会での(城山英明)先生おご発言である。その日のテーマは、原子力政策だったと記憶している。詳しい文脈は覚えていないが、原子力安全規制に携わる人員は日に比べてアメリカの方が圧倒的に多い。その意味でアメリカは案外大きな政府である、という先生のご指摘が筆者には大変印象的だった。気になって調べてみると、原子力行政に限らず、アメリカは日よりも公務員が多い国だった。それまで筆者はアメリカの方が官僚制の権力が弱く、小さな政府なのではないかと思っていただけに、この事実は極めて反直観的であった。そして、なぜ日では公務員がこれほど少ないのか、その理由が知りたくなった。(294p) これはこのの「あとがき」に書かれている文章ですが、確かに「日公務員アメリカよりも少ない」と聞くと、「えっ?」と思う人も多いでしょう。アメリカは「小さな政府」であり、それに比べると日には肥大化した官僚機構

     前田健太郎『市民を雇わない国家』 - 西東京日記 IN はてな
    florentine
    florentine 2019/09/22
    「むしろ、最も大きな不利益を被ったと考えられるのは、他の国であれば公務員になれたにもかかわらず、日本では公務員になることができなかった社会集団、すなわち女性である。(260p)」
  •  ジョルジュ・ペレック『煙滅』 - 西東京日記 IN はてな

    だが、やがて、そのテクストを作った法則がどんなものか分かれば、驚嘆の念を強めることとなるだろう。使える単語は半分もなく、多くの語が消された、不完全で粗末なコーパスだけを使って、結末まで不足なく書かれたのだから。 <語れぬもの>をそのまま名指すことは避けつつも、他の方法を使ってなんとか語るだけでなく、それとなく指す、連想させる、他の要素を全部挙げるなどの方法で、もっとうまく判然と語る。そんな破天荒な軽業は我々を唖然とさせ、当のテクストがナンセンスではなく<読まれうるもの>だと納得させてくれるだろうが、それでも、テクストそのものが深く読まれることはまずなかろう。 ここまでくれば、ようやく分かるであろう。すべてがこれほど厳格かつ過酷な束縛のもとで書かれた訳が。(218p) いきなり引用から始めましたが、このこの小説をずばり解説しているような文章は、「あとがき」でも「訳者解説」でもなく小説文の

     ジョルジュ・ペレック『煙滅』 - 西東京日記 IN はてな
  •  ダニロ・キシュ『死者の百科事典』読了 - 西東京日記 IN はてな

    歴史は勝者が書く。伝承は民衆が紡ぎ出す。文学者たちは空想する。確かなものは、死だけである。(119p) http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20080629/p1で絶賛した『砂時計』の作者、ダニロ・キシュの短編集。収録された9篇の短編はいずれも「死」をめぐる物語で、冒頭に掲げた収録作の一つ「祖国のために死ぬことは名誉」のラストの言葉がこの短編集のテーマといっていいでしょう。 このは文学者ダニロ・キシュがさまざまな「死」について空想した物語です。 9篇の短編の中でも特に良くできているのが表題作でもある「死者の百科事典」。 あらゆる無名の死者についての記録が収められているというスウェーデンの図書館。そこで主人公は自分の父の記録を収めたを読むことになります。 死者についてのあらゆる記録が書かれているというそのには、父の生まれた場所から、父の記憶、父の暮らした

     ダニロ・キシュ『死者の百科事典』読了 - 西東京日記 IN はてな
    florentine
    florentine 2010/09/02
    「歴史は勝者が書く。伝承は民衆が紡ぎ出す。文学者たちは空想する。確かなものは、死だけである。(119p)」
  •  ダニロ・キシュ『若き日の哀しみ』読了 - 西東京日記 IN はてな

    帯に「書をお読みにならない方にも、「少年と犬」、この一編はどうしても読んでいただきたいのです」とあって、セールストークとしてはどうなんだ?って思ったけど、読めば納得。 少年と飼い犬の別れというありがちなテーマを扱ったものですが、「口をきく犬」の語りから始まるこの短編は、描写、構成とも素晴らしいですし、「泣ける短編」として文学史上でも屈指のものではないでしょうか? http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20071022/p1で「私家版・世界十大小説 短編編」というのを選んだことがありますが、今なら、この「少年と犬」を入れますね。 ここで紹介するのも3冊目になりますが、ダニロ・キシュはユーゴスラビアの作家で、『砂時計』でも描かれたいたようにユダヤ人である父親を強制収容所で失った経験のある人物。 この『若き日の哀しみ』は、彼の少年時代を描いた連作短編集。みずみずし

     ダニロ・キシュ『若き日の哀しみ』読了 - 西東京日記 IN はてな
    florentine
    florentine 2010/09/02
    ハンカチじゃなく、タオルが必要なほど泣きました。
  •  ダニロ・キシュ『砂時計』読了 - 西東京日記 IN はてな

    かなり読む人を選ぶ小説かもしれませんが、これは面白い! 帯に書かれた若島正の紹介文はこんな感じ。 『砂時計』には、現実に書かれた一通の手紙が取り込まれている。その手紙の中に封印された、歴史的事実の重みを前にして、わたしたち読者は打ちひしがれるが、それと同時に、そのまわりに複雑な虚構の迷宮を築かずにはいられなかった、作者ダニロ・キシュの不屈の精神にも圧倒されるのだ。 を読む前にこの紹介文を読んでも全然ピンと来ないかもしれないけど、読み終えた今はこの紹介文が当に的確だと思う。 アウシュビッツで命を落としたというユダヤ人で作者ダニロ・キシュの父親エドゥアルド。 この『砂時計』はこのエドゥアルド(作中ではE・Sと表記される)の人生の一部が、複雑かつ巧妙な構成によって語られます。 影の揺らめき。それは燃え上がったと思えば消え入りそうになりしぼんでいくぎざぎざの炎のままに、天井と壁を近づけたり遠ざ

     ダニロ・キシュ『砂時計』読了 - 西東京日記 IN はてな
    florentine
    florentine 2010/09/02
    これはほんとに凄い小説です。
  •  ダニロ・キシュ『庭、灰』(庭、灰/見えない都市 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集2) ) - 西東京日記 IN はてな

    『砂時計』、『若き日の哀しみ』と並ぶユーゴスラビアの作家ダニロ・キシュの「家族三部作」の第一作が邦初訳で池澤夏樹編集の世界文学全集に登場。 この池澤夏樹の世界文学全集、そんなに素晴らしいセレクションだとも思わないんだけど、このキシュの『庭、灰』を選んだことは高く評価したい。 何といっても、20世紀における究極の小説とも言える『砂時計』と、泣きの短編として今まで読んだ中でもベスト級の「犬と少年」を含む『若き日の哀しみ』に並ぶ、キシュの「家族三部作」の一つですから。 発表の順番は作『庭、灰』→『若き日の哀しみ』→『砂時計』の順。 作者の少年時代の思い出と、アウシュビッツに消えた父をめぐる話が語られているんだけど、この『庭、灰』から、キシュの少年時代の叙情的な部分を蒸留したのが『若き日の哀しみ』、そして残った父をめぐる謎を芸術的に組み上げてみせたのが『砂時計』ということになるでしょうか。 と

     ダニロ・キシュ『庭、灰』(庭、灰/見えない都市 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集2) ) - 西東京日記 IN はてな
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