最初から結果のわかっていた安保国会より、新国立競技場のほうが日本の政治の今後を考える上で重要な試金石だった。安倍首相が「聖断」を下したことは高く評価したいが、この経緯についての産経の記事で気になったのは、次の部分だ。 首相が工期などの計画見直しを文部科学省に指示したのは6月2日頃だった。総工費や工期など現状計画の変更が可能かどうか検討するよう伝えた。「計画の見直しを再検討してみてほしい」。これに対し、文科省の回答はかたくなだった。「できません」。 これを読んで私が思い出したのは、『昭和天皇独白録』の次の一節だ。 この問題[三国同盟]に付ては私は陸軍大臣とも衝突した。私は板垣[征四郎]に、同盟論は撤回せよと云った処、彼はそれでは辞表を出すと云ふ、彼がゐなくなると益々陸軍の統制がとれなくなるので遂にその儘となった。(p.51、強調は引用者) 1940年に締結された三国同盟が、日米戦争への最後の