幼少期を朝鮮半島で過ごした作家の五木寛之さん。戦争が終わり、母を病で亡くし、2年かけて「一生分の苦労」をして福岡に引き揚げてきた後、物書きとして世間の注目を集めてもなお、虚無感や罪悪感にとらわれてきたと言います。それでも行く先を照らし続けたのは、幼い頃に半島で接した風景と、それを見て幼心に芽生えた思いでした。五木さん自身に半生を語ってもらう連載「語る 人生の贈りもの」(全15回)をまとめてお届けします。 ◇ これまで何冊の本を出したんだろう。小説家として世に出てかれこれ52年になりますが、自分のやってきたことに、あんまり関心が向かない方でしてね。 「流されゆく日々」というのが、日刊ゲンダイで40年以上連載しているエッセーのタイトルです。時流に逆らって生きていく、というより、流されていこうか、と。いいかげんなようですが、まぁ、そういうたちなんです。 大変な時期は山ほどありましたし、ここまで来