岸田文雄首相が最重要項目として掲げた「異次元の少子化対策」。しかし具体的な政策はなかなか提示されず、子育て世代を中心に批判する声も多い。一方で、東京都、福岡市、大阪市が子育て支援にかかる所得制限の撤廃を掲げるなど、異次元の少子化対策は国に先んじて地方自治体から広がり始めている。 こうした動きの“はじめの人”として注目を集めているのが明石市の泉房穂市長だ。 “暴言”が取沙汰されて政治家引退を表明したが、その豪腕で明石市を改革してきたのもまた事実だ。所得制限なしであらゆる子育て支援策を実施。高齢者や障害者、LGBTQ+のための条例も整備している。結果、10年連続で人口増、出生率は2021年度に1.65(国は1.3)を達成した。 既得権益層からの猛烈な反発のなか、なぜこうした政策を実施したのか。 泉市長は瀬戸内海に面した小さな漁師町に生まれ、「それなりに貧乏だった」。そして4つ下に障害を持った弟
同氏の少年愛は以前から噂にはなっていたもののタブーとされていた。1964年にジャニーズ事務所が新芸能学院と授業料の支払いを巡るトラブルで裁判となった際に彼の性的虐待も公になったが、当時は同性愛へのタブー視と重なり、口にするのは憚られていた。 週刊文春は一連の告発キャンペーンで、ジャニーズ事務所の教育的配慮の欠如や不公正な労働条件、不当な報酬配分などの人権蹂躙を指摘。好奇心を煽る単なるスキャンダルとしてではなく、声なき弱者の声を拾い、事実を可能な限り客観的に伝え、世に問うことが主眼だった。 「なぜ、日本のメディアは取り上げないのか」 BBCは以前からこの報道に関心があり、22年夏にロンドンから取材のために来日。当時取材班のひとりだった筆者は、文藝春秋で元同僚と共に撮影インタビューを受けた。 ジャーナリズムを専門に学び多くの取材現場を経験した優秀なBBCのスタッフは記事を熟読・研究しており、独
11月27日、新宿駅西口の地下広場。私はわが目を疑った。100人ほど(主催者発表数百人)の在日中国人の若者たちが、集まって中国政府に抗議しているのだ。マスクや帽子、メガネなどで顔を隠している人が多いものの、見たところ一般人っぽい雰囲気である。日本語が上手な人も多く、留学生の比率が高いのだろう。 たくさんの人たちが、手に白い紙やプラカードを持っている。プラカードの文言はかなり手厳しい。「ゼロコロナ政策反対」「自由を、さもなくば死を」「習近平くたばれ」「中国共産党の思考様式は人類文明の最大の脅威だ」「人類は共産党を歓迎しない」……。多くは油性ペンでの手書きで、印刷されたものもせいぜいワードソフトで作っただけという手作り感が満載である。 「白い紙」は、今年に入ってからゼロコロナ政策や習近平政権の3期目突入に反対して街に出た中国人がしばしば掲げるようになったアイテムだ(抗議のスローガンが書かれてい
牛は食えるか、犬は食えないか? 『もの食う人びと』(共同通信社)がベストセラーになっている作家の辺見庸(へんみ・よう)さんにお会いしました。『もの食う人びと』は、世界中のさまざまな食い物を、まさに、「食う」という視点のみからルポした内容なのです。 この本があんまり面白かったので、いろんな質問をさせていただきました。 今までで、食べた物の中で、一番、美味しかったのはなんですかという質問に、「ピョンヤンで食べた犬料理ですね」と辺見さんは答えられました。 と、横にいた女性が、「ぎゃあー! いぬうううぅぅ!?」 と、絶妙のタイミングで、絶叫しました。 そういう反応に辺見さんは慣れているらしく、「ええ、犬料理です。サイゴンで食った犬料理は、だめでしたね。犬鍋なんですけど、手とか足とか毛がついたまま、そのままの形で、入ってるんですよ。でも、ピョンヤンの犬料理は、丁寧に身をほぐしていて、絶品でした」と、
東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏。ロシアによるウクライナ侵略からしばらくの間、テレビを始めとするメディアで見ない日はなかったといっても過言ではない、ロシア軍を専門とする安全保障研究者だ。 ウクライナ侵略に踏み切ったプーチン政権に対して厳しい目を向ける氏ではあるが、自身の経験をもとに、市井のロシア人の生活から、国家観、社会を紹介する『ロシア点描』(PHP研究所)を上梓するなど、軍事以外の面での理解の必要性も訴えている。 ここでは、今回のウクライナ侵略に対する自身の見解や、研究者としての心境について伺った。(全3回の3回目/#1、#2を読む) ◆◆◆ この戦争は「ハイブリッド戦争」ではない ――話を戦争に戻します。今回の戦争は多様な主体や手段を用いるハイブリッド戦争であるか否か、識者の間でも分かれていますが、どう思われますか? 小泉悠さん(以下、小泉) ハイブリッド戦争をど
◆◆◆ 一進一退の戦場 ――まず、ウクライナの直近の戦況について、小泉さんの見解は?(※インタビューは7月15日) 小泉悠さん(以下、小泉) 一進一退と思います。どちらも大勝ちできる状況にない。ロシア軍は火力が非常に強力で、要するに大砲やロケット砲の数というか、分厚さが半端ない。今は東部のドンバスを中心に真っ平らな地形で戦っているから、遠距離からロシア軍に一方的にやられてウクライナ軍は勝てていない。 ところが、ウクライナ軍はもともと軍隊が約20万人でその他の治安部隊は10万人、計30万人くらいの軍事力だったのが、今は動員で100万人に膨らんでいる。数の上ではものすごく大きな軍隊を持っているので、簡単には負けない。 ただ、ロシア軍に勝てないし、遠距離で戦うと圧倒的にロシア軍の方が強い。一方、ロシア軍は大砲で叩けるけど、占領する兵隊がいない。陸軍種の最大の機能は土地を占領することですが、ロシア
あらゆることを「ヤバイ」「エグイ」「死ね」で表現する子供たちを想像してみてください。彼らはボキャブラリーが乏しいことによって、自分の感情をうまく言語化できない、論理的な思考ができない、双方向の話し合いができない――極端な場合には、困ったことが起きた瞬間にフリーズ(思考停止)してしまうんですね。これでは、より問題がこじれ、生きづらさが増すのは明らかです。 以前はこうした実情を、〈うまくいっていない子〉に共通の課題だと認識していました。ところが数年前から、各地の公立学校に講演会や取材でうかがうことが増えるなかで、平均的なレベルとされる小・中学校、高校でも、現場の先生たちが子供たちの国語力に対して強い危機感をもっていることがわかりました。言葉によってものを考えたり、社会との関係をとらえる基本的な思考力が著しく弱い状態にあるという。 ©iStock.com そしてあるとき僕自身、都内の小学4年生の
変異ウイルスと医療崩壊 変異ウイルスが恐ろしいのは、その感染力が従来型よりさらに強力になるからですが、それだけではありません。変異ウイルスではウイルスの産生量が増えていることも報告されており、細胞から細胞へと次々に感染が広がるために重症化リスクが高くなり、さらにはワクチンによって生み出される抗体をすり抜けて(抗体にくっつかなくなって)効果を低減させる可能性があるからです。 ウイルスの感染力の強さと病原性の強さは、同じではありません。 もともとのコロナウイルスを病原体とする一般的な風邪は、たとえ感染力が強くてもほとんど重症化しませんが、新型コロナウイルスは、感染を契機としてサイトカインという炎症物質が感染部位で大量に放出されることで重症化するとわかっています。サイトカインが大量に作られて患部に放出される理由は、まだ明らかではありません。 アルファ型変異ウイルスでは、従来型新型コロナウイルスに
その動画には、サッカー選手、本田圭佑(35)の姿が映っている。デスクの椅子に腰掛け、英語の発音の練習をしている場面だ。リモートでお手本を見せているのは、「だいじろー」と呼ばれる日本の若者である。 「渋滞を避けるために、サムは路面電車を追いかけた」(Sam ran after the tram to escape the traffic jam) 母音の多い例文を、だいじろー(32)が流暢な英語で発音すると、本田がそれに続いた。その上達ぶりにだいじろーが思わずうなった。 本田の発音指導をするに至った経緯とは 「いやあ、めちゃくちゃいいです!」 感想を伝えられた本田は両手を叩き、「ブラボー!」と連呼した。 別の例文では、だいじろーがこうアドバイスする。 「練習の時はうまくいっても、実際にネイティブと話すと(練習通りの発音が)出てこなくなるんです。それは英語を理解しなきゃ、ちゃんと話そうとして緊
ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始してから約1週間。刻々と変化する戦況や現地での痛ましい被害が伝えられるなか、未だに見えないのが「プーチン大統領の思惑」だ。プーチンは何を求め、どんなシナリオのもとでこの侵攻を行っているのか。 そこで、防衛省防衛研究所でロシアの安全保障について研究している山添博史氏(主任研究官)にインタビューを行った。全面侵攻が始まった2月24日、報道番組「news every.」(日本テレビ系)に出演し、「ロシアの嘘を許してはならない」と強く語った山添氏は、現在のウクライナ情勢をどう見ているのか――。(全2回の2回目/前編から続く) ※インタビューは3月1日夜に行いました ◆ ◆ ◆ ――今回の侵攻によって、ウクライナ国内では反ロシア化が顕著になっています。そうした状況では、仮に一時的にロシアが制圧できたとしても、長期的にウクライナを服属させることは難しいのではないでし
ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始してから約1週間。刻々と変化する戦況や現地での痛ましい被害が伝えられるなか、未だに見えないのが「プーチン大統領の思惑」だ。プーチンは何を求め、どんなシナリオのもとでこの侵攻を行っているのか。 そこで、防衛省防衛研究所でロシアの安全保障について研究している山添博史氏(主任研究官)にインタビューを行った。全面侵攻が始まった2月24日、報道番組「news every.」(日本テレビ系)に出演し、「ロシアの嘘を許してはならない」と強く語った山添氏は、現在の情勢をどう見ているのか――。(全2回の1回目/後編に続く) ※インタビューは3月1日夜に行いました ◆ ◆ ◆ ――ロシアがウクライナに侵攻してから6日が経ちました。ロシアの安全保障を専門とされる山添さんにとっても、やはりこの事態は想定外のものだったのでしょうか。 山添 2月21日の夜にロシア連邦がウクライナ東
『石原慎太郎』(中島岳志 著) 石原慎太郎は特異な人物だ。昭和三十一年、『太陽の季節』によって二十三歳で芥川賞を受賞、太陽族ブームを巻き起こし、古い価値を打破する反逆的若者の代表となった。それが、いつしか自民党のタカ派議員となり、元祖ネトウヨ的な暴言を連発する東京都知事に豹変する。いったい、いつ変わったのか? 〈作家はなぜ政治家になったか〉の副題を持つこの短い評伝は、そんな石原の変化の諸相を鋭く突いている。古い資料の発掘と丹念な読み解きが、興味深い。「憲法改正や再軍備は、再びわけのわからぬ国家意識を復活させるから反対。(略)今の憲法の明るさがいい」――若き日の石原の発言に唖然とする。「もし戦争になって徴兵で引っ張り出されたら」と問われ、即座に「逃げちゃう」と応えてもいる。古市憲寿ではない、石原慎太郎が! 護憲で厭戦的な若手作家が、最初に政治に直面したのは「若い日本の会」だ。江藤淳が主宰し、
一体、この1カ月間は何だったのか――。臨時国会が閉会した12月9日、記者会見の場に立った安倍首相は、野党に追及されている「桜を見る会」問題について、これまで通りの説明を改めて繰り返した。 「公費を使う以上、これまでの運用を大いに反省し、今後、私自身の責任において全般的な見直しを行っていく」 一方の野党も、11月8日の共産党・田村智子参院議員の質問にはじまり、舌鋒鋭く政権を批判、メディアを巻き込んで議論を大いに盛り上げたが、次の一手を打ち出せない。与野党ともに自らの主張を繰り返すばかりで、議論が空転し続けたようにも見える。 「『この騒動は何だったのか』と、国民が思うのも無理はありません。騒がしかっただけで、実は1ミリも社会が動かない。この状態は、この数年の日本社会の言論状況を象徴しています」 そう語るのは日本大学危機管理学部教授で、日本思想史が専門の先崎彰容氏だ。 「SNSが普及し自分の意見
幻の“MIKIKOチーム版”五輪開会式を完全再現!【電子版オリジナル】 もし実現していたら、どうなっていたのか。小誌が入手した写真と資料で再現してみると…… 8月8日に閉幕を迎える東京五輪。小誌はかねてより、その最大のセレモニーである開会式をめぐる混乱ぶりを報じてきた。混乱の原因は昨年5月、演出振付家・MIKIKO氏が演出責任者の座を突如奪われたこと。MIKIKO氏に代わって責任者の座に就いた電通出身のCMクリエイター・佐々木宏氏は、既に完成していたMIKIKO氏の企画案を無残に切り刻み、作り替えた。しかしその佐々木氏も今年3月、小誌に渡辺直美をブタに喩える不適切な企画案を提案したことを報じられ、辞任に追い込まれた。 小誌はMIKIKOチームが完成させた“幻の企画案”を入手し、その内容を報じてきた。昨年4月6日付で、IOCにプレゼンをするために作られたものだ。MIKIKO氏はこの企画案の完
演出責任者の相次ぐ交代など迷走を重ねた五輪開会式。今回入手した11冊にも及ぶ台本には、その過程が詳らかに記されていた。なぜ、どのようにして、開会式は“崩壊”していったのか。小誌だけが書ける全内幕――。 そのセレモニーは、新国立競技場に1台のバイクが颯爽と走ってくるシーンから幕を開けるはずだった。大友克洋氏の漫画『AKIRA』の主人公の愛車、赤いバイクだ。会場に映し出されるカウントダウンの数字。ゼロになると、中央のドームが開き、ステージに3人の女性が姿を見せる。Perfumeだ。会場には、彼女たちをプロデュースする中田ヤスタカ氏の書き下ろし楽曲が流れている。 Perfumeの出演は幻に終わった 精魂込めて作り上げた210分間のステージが、全世界の人々を虜にし、アスリートたちの背中を押していく。演出振付家・MIKIKO氏と彼女が率いてきたチームにとって、東京五輪の開会式はそんな晴れ舞台となるに
筆者は普段はアメリカで陸上などを中心に取材をしているジャーナリストで、東京オリンピックの取材パスは個人で取得した。取材パスを取得したジャーナリストやメディアには、組織委員会から入国手続きやコロナ検査に関する資料、入国してからの行動規制、取材規則など膨大な資料が連日送られてくる。しかしメディアの担当者によると、その対応が「オリンピック史上最高の難易度」だというのだ。 海外メディアが取材のために日本へ渡航する場合、搭乗前96時間以内に2回の検査が必要となる。しかし日本政府が指定する検査を行う医療機関に限りがあるため、メディアの「コロナ対策責任者」は各医療機関への連絡、書式の確認、予約を行う必要がある。検査から入国日までに週末をはさむ場合などは、検査結果が間に合うかヤキモキさせられる。 問い合わせをしてもまともな応答はない 入国前には、入国後2週間の取材予定表や出国予定の提出が義務づけられている
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