2025年1月、トランプ大統領は大統領就任に合わせて、連邦政府内の「多様性、公平性、包摂性(DEI)」プログラムを廃止する大統領令に署名した。これが、当然ながら、米国社会で激しい議論を呼んでいる。これを「反動的な政策」と強く非難する声は多いものの、「DEIを一方的に肯定してきた流れに疑問を呈するきっかけになる」と考える人もいる。背景には、人種や性別などの属性を積極的に“見る”ことで不平等を是正しようとするDEIと、人種や性別をあえて“見ない”ことで個々の能力を重視するカラーブラインド平等(CE: Colorblind Equality)という、平等をめぐる二つの理念の対立がある。 DEIが重視するのは、歴史的に不当な差別を受け、機会に恵まれずにきたマイノリティの置かれた現実や構造的な不利を正面から認め、それを積極的に是正していくことだ。大学の入試や企業の採用現場でアファーマティブ・アクショ