サウジアラビアをはじめとするアラブ圏の子供時代に欠かせないのが、日本のアニメ作品だ。しかし、この地で放送されるアニメには単なる娯楽以上の役割が期待されており、その目的のもと行われる吹き替えのプロセスゆえに、「自国の作品だと思っていた」という人も存在するという──。 選ばれたのは「日本のアニメ」 『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』は、イスラム教誕生以前からアラビアで語り継がれ、コーランにも記された有名な伝説に着想を得て制作された映画だ。この作品は、古代エチオピアに栄えた王国・アクスムによるメッカ侵攻を現代風に語り直している。 南アラブの王アブラハは、メッカのカーバ神殿を破壊し彼自身を祀る寺院を建設するため、伝説の象騎兵軍団で出撃する。 彼らアクスム王国軍の前に立ちはだかるのは、一介の陶器職人アウス。家族を守るためだけだったはずの彼の戦いは、叙事詩におきまりの展開としてどんど