「忘れられた村」が宇宙への「夢の拠点」に 乳白色の雲が広がる空の下、一本のアスファルト道が起伏しながら何キロも続いていた。遠くの地表付近は陽炎で揺れ、強い日差しのせいでアスファルトが溶け出しそうだった。 灼熱の空気が重くのしかかり、時間もゆっくりと流れる。すると突然、目の前に砂浜が現われた。この黄金色の砂の浜辺が、テキサス州最南端のリオ・グランデ川の河口まで長く続くのだ。 ここがメキシコとの国境に近いボカチカの村である。 エキゾチックなのは名前だけで、この地には高級ホテルも流行のバーもない。巨大クルーザーが泊まるマリーナもなく、あちこち行き来する観光客のためのレストランの類もない。左を見れば、道の向こうに潟湖が遠くまで広がり、近隣のリゾート地サウスパドレ島のホテル群が水平線に林立して見える。その様子は、小さなマッチ棒がセロテープで貼りつけられているかのようだった。 内陸側を見れば、サボテン