トッド:移民と移民受け入れ側の社会の家族システムの違いに着目したのは私の『移民の運命』が嚆矢でした。どうして移民の受け入れが大変になるのか、その根本原因を明らかにしたのです。 ただ、1992年の時点では、フランスにおけるアルジェリア系の女性の民族混交婚の率が25%だったのに対し、ドイツではトルコ系の移民の民族混交婚は2%以下でした。そのときのフランスは移民を同化できていたわけです。 ところが、その後、単一通貨ユーロの導入のせいで経済が行き詰まり、社会移動の速度が遅くなりました。フランスの社会はいま行き詰まっています。失業率が10%で高止まりする構造になってしまっています。 私はエルヴェ・ル・ブラーズとの共著『不均衡という病』で、移民の同化がうまくいかなくなっており、フランスにおける民族混交婚の率が、よその国よりも高いにせよ、低迷していることを指摘しました。 とくにマグレブ系が暮らす地域が地