アジア各地で活躍し、現在はフィリピンのマニラを拠点にするジャーナリストのマリア・レッサは、権力者の腐敗や人権侵害を暴いてきたと同時に、ソーシャルメディアが嫌がらせや世論操作に使われている実態に光を当て、警告を続けている。 インターネット上の「つまらない事実よりもおもしろい嘘に注目する」という風土は、インターネットの外に広がり、民主主義を危機に陥れている。根本的な対策がなされなければ、まもなく民主主義は完全に敗北してしまう──そのような強い危機感を訴えるレッサに、英紙「ガーディアン」が取材した。これからの世界の展望と、偽情報と戦うための処方箋を聞く。 情報を汚染するソーシャルメディア 2021年、マリア・レッサはロシアの編集者ドミトリー・ムラトフとともにノーベル平和賞を受賞したが、ジャーナリストに同賞が授与されたのは1935年以来だった。1935年当時、ドイツのジャーナリスト、カール・フォン