アメリカのニューメキシコ州の町で1970年代から、オフグリッド(電力を自給自足している状態)で、食糧も自給自足できる、サステナブルな住宅の建設に取り組んできた人物がいる。当初は好奇の目で見られたこの「アースシップ」は現在、気候変動や新型コロナウイルスの流行によって、これまでにないほどの注目を集めている。 ニューメキシコの大地に浮かぶ「船」 世界が滅亡する日がまた少し近づいたとしても、マイク・レイノルズはあまり心配することはなかった。2020年春、コロナ禍による世界的なサプライチェーンの混乱を受けて、食料品店の前には車の行列ができた。そしてこれまでにない異常気象の影響による山火事がアメリカ西部を、巨大なハリケーンが南部を襲い、テキサスでは大寒波により大規模な停電が発生した。 それでも、レイノルズは涼しい顔をしていた。「私はテレビでそういった現象を見ながら、わが家の廊下を歩き、バナナやほうれん