2021年10月、社会科学部門でスペインのアストゥリアス皇太子賞を受賞したアマルティア・セン。ケンブリッジ大学トリニティー・カレッジ学長を務め、アジア人初のノーベル経済学賞を受賞したという輝かしい経歴を持つ彼は、トマ・ピケティをはじめとする現代の経済学者たちに影響を与えてきた。87歳になったセンの功績を総ざらいし、今後の世界について占う。 アマルティア・センが、自身の若かりし頃のことを書いた回顧録『ホーム・イン・ザ・ワールド』(未邦訳)で自らの人生で成し遂げられたことの“少なさ”について嘆くのを読むと、ノーベル賞「偽りの謙虚さ」の候補に入れてしまいたくなるほどだ。 世界を飛び回ってきた知識人であるセンほど、多くの功績を挙げた人はあまりいないだろう。センは「社会的選択の理論」に哲学的視点をもたせ、不平等の問題に取り組むため「潜在能力アプローチ」を提案し、さらには国連が採用する「人間開発指数(
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