18世紀の政治哲学者エドマンド・バークは、英国紳士の育成に必要なのは、自尊心を持つことを学び、人目にさらされることに慣れ、会話術に磨きをかけることや思索に耽ることに喜びを見出すことだと考えた。このような育成を受けた現代人として、ダグラス・マレーほどの好例はないだろう。 品の良い声、ビデオ通話画面の背景に映る窓の外の自宅の庭、そしてイートン校とオックスフォード大学マグダレンカレッジという世界で最もエリートな教育機関の2つに通ったことが、それを事実として裏付けている。 だがイギリス保守派ジャーナリズムの騎手として見せたその冷静さは、移民を題材とした『西洋の自死:移民・アイデンティティ・イスラム』や、アイデンティティ・ポリティクスを批判した『大衆の狂気:ジェンダー・人種・アイデンティティ』などの自著では、強打に変わる。マレーは思想のボクサーであり、繊細な論客だ。 新著『西側との戦争』(未邦訳)で