フランス誌「ル・ポワン」のインタビューに登場した、“知の巨人”ナシーム・ニコラス・タレブ。同誌が1972年に創刊された当時のテーマ「何ごとにも絶望しない」に対する見解を皮切りに、希望という概念、宗教、陰謀論、民主主義、ロシア、気候変動を語る。 希望だけでも、警戒心だけでもダメ ──人は「何ごとにも絶望しない姿勢を選ぶことができる」と思われますか? これは楽観主義の問題です。その人がどういう人で、どういう状況にあるのかによるでしょう。 私は飛行機に乗るとき、キャビンアテンダントは楽観主義者であって欲しいと思いますが、パイロットは絶対的な悲観主義者を希望します。金融の世界でも、トレーダーならば、期待などはすべきでなく、むしろ後備を固める、つまり逃げ道を確保しておくことが必要です。間違った楽観主義は、予防策を講じる邪魔になるのです。 「希望」というものは、宗教と結びついています。組織化された宗教