ウクライナに侵攻したロシアに日本が制裁を科せば「北方領土問題」が後退するという展開は、大半の日本人にとって驚きではないだろう。だが、北方四島の元住民らにとってそれは何を意味するのか? 米紙「ワシントン・ポスト」東京支局長のミシェル・イェ・ヒ・リーらが北海道の根室市で取材した。 1945年9月4日、ソ連兵たちが河田弘登志(かわた・ひろとし)の家に入り込み、日本兵をかくまっていないか、貴重品を隠していないか探しにきた。当時11歳だった河田は、彼らのしゃべっている言葉で2つの単語だけ聞き取れたのを覚えている。時計と酒だ。それらを彼らは略奪していった。 日本の北にある資源豊かな列島を、ソビエト連邦が乗っ取りはじめたのだ。日本が第二次世界大戦で降伏して、悲惨な戦争もこれで終わったと思っていた島民たちにしてみれば恐ろしいことだった。ほどなく日本人たちは自由に働いたり引っ越したりすることを禁じられ、女性