南イタリアのナポリ近郊に位置するポンペイは、紀元79年、ヴェスヴィオ山の噴火によって一昼夜にして街のすべてが埋没した。大々的な発掘が開始されたのは18世紀のことで、たちまち古代ローマ文明をリアルに体感できる都市遺跡としてヨーロッパ中の話題をさらった。 詩人ゲーテは「こんな興味ふかいものはそう沢山はない」と断言し、「(家の内部に)実にきれいに絵がかいてある」ことに感心している(『イタリア紀行』(中)、相良守峯訳、岩波文庫、37頁)。しかしその一方で、彼は「ポンペイのせせこましく、小さいことは、皆が意外とするところである」とも述べている(同、30頁)。首都ローマの巨大な古代遺跡を見慣れた目には、ポンペイは「ローマ帝国の一地方都市」として映ったようだ。 しかしゲーテが目にし、理解したのは、当時発掘中だった(そして今もなお発掘中の)この街のほんの一面に過ぎない。すべてが灰に覆われ、そのまま2000
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