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ブックマーク / natgeo.nikkeibp.co.jp (73)

  • 監修者が解説、特別展「ポンペイ」の見どころ、2000年前が鮮やかに蘇る

    南イタリアのナポリ近郊に位置するポンペイは、紀元79年、ヴェスヴィオ山の噴火によって一昼夜にして街のすべてが埋没した。大々的な発掘が開始されたのは18世紀のことで、たちまち古代ローマ文明をリアルに体感できる都市遺跡としてヨーロッパ中の話題をさらった。 詩人ゲーテは「こんな興味ふかいものはそう沢山はない」と断言し、「(家の内部に)実にきれいに絵がかいてある」ことに感心している(『イタリア紀行』(中)、相良守峯訳、岩波文庫、37頁)。しかしその一方で、彼は「ポンペイのせせこましく、小さいことは、皆が意外とするところである」とも述べている(同、30頁)。首都ローマの巨大な古代遺跡を見慣れた目には、ポンペイは「ローマ帝国の一地方都市」として映ったようだ。 しかしゲーテが目にし、理解したのは、当時発掘中だった(そして今もなお発掘中の)この街のほんの一面に過ぎない。すべてが灰に覆われ、そのまま2000

    監修者が解説、特別展「ポンペイ」の見どころ、2000年前が鮮やかに蘇る
  • 第3回 エルフ、ドワーフ、オージン――バイキングの活躍と北欧神話の浸透

    信州大学人文学部の研究室で、伊藤盡さんと相対している。 「イム・イトウ・ツクス、マエ・ゴヴァンネン、ラスト・ベス・ニン」 伊藤さんが語りかけた言葉は、ぼくの耳にはただの音の羅列だ。しかし、それが言語としての秩序を持っており、意味を持っていることは分かる。耳に心地よい言語であるとも感じる。 これは映画『ロード・オブ・ザ・リング』で使われたエルフ語で、あいさつの言葉だ。「私は伊藤盡です。お会いできて光栄です。私の言葉を聞きなさい」という意味だという。 トールキンが創造したエルフ語は、今やその言語に魅了された人々によって拡張され、ネオ・シンダリン(シンダール・エルフの新しい言語)と呼ばれる、より広範な設定を持ったものが開発されている。映画に使われているのは、まさにそれだ。8世紀頃まで話されていた絶滅言語トカラ語(最も東側で話されていたインド・ヨーロッパ語とされ、独特な線文字で有名)の研究者で、優

    第3回 エルフ、ドワーフ、オージン――バイキングの活躍と北欧神話の浸透
  • 第1回 バイキングと北欧神話とトールキンの「異世界」へようこそ

    社会が閉塞感に覆われた時、ファンタジー小説映画、マンガ、アニメなどが流行しがちだという。現実の先行きが見通せない時に、人は「ここではないどこか」、つまり異世界を求めるのかもしれない。 2020年のはじめよりのパンデミックで世界が「縮んで」しまった時、日では鬼と対決する若者たちを描いた「ファンタジー」が社会現象になった。様々な「異世界」に転生するパターンを踏襲する小説やマンガも追いきれないほど描かれた。 一方で、ぼく個人の経験としても、感染症疫学や国際保健の基礎知識を読者に届ける仕事を少しはしつつも(WEBナショジオで、神戸大学の中澤港教授と10回に渡る長大な連載をした)、心は「ここではないどこか」にあったように思う。読書傾向もファンタジーに寄っていったし、『ロード・オブ・ザ・リング』などのファンタジー巨編映画を配信サービスで久しぶりに鑑賞したりもした。『スター・ウォーズ』サガ(シリーズ

    第1回 バイキングと北欧神話とトールキンの「異世界」へようこそ
  • コロナ感染で人格が変わる? 脳研究でわかってきたこと

    フォトジャーナリストのジャラル・シャムサザラン氏は、アルツハイマー病と闘う父の姿を記録した。写真は、母が父に、ここは父自身が若い頃に建てた家なのだと教えているところ。神経科学者らは、新型コロナ後遺症の症状の一部がアルツハイマー病などの神経変性疾患の症状と似ている点に注目している。(PHOTOGRAPH BY JALAL SHAMSAZARAN, NVP IMAGES) 2020年の前半、新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増加していた米ニューヨーク市で、尊敬される救急医ローナ・ブリーン氏が自死した。49歳だった彼女は、ニューヨーク長老派アレン病院の医長を務めており、聡明で、精力的で、有能な人物と評価されていた。精神疾患の病歴はなかったが、新型コロナに感染したことで状況は一変した。 ブリーン氏は同年3月18日に発症し、10日間の闘病を経て仕事に復帰した。しかし家族は心配していた。氏が混乱し、

    コロナ感染で人格が変わる? 脳研究でわかってきたこと
  • 宇宙の膨張速度に新たな推定値、宇宙論モデルより8%速く

    ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた渦巻銀河Mrk1337。地球からの距離はおよそ1億2000万光年。2006年にこの内部で起こった超新星爆発が、現在の宇宙の膨張速度を計算するために必要なデータを提供した。(IMAGE BY ESA/HUBBLE & NASA, A. RIESS ET AL.) 観測から得られた複数のデータに基づくと、宇宙は、宇宙論に基づく最も優れた推定よりも速く膨張しているという。なぜそのようなズレが生じたかは定かでないが、その証拠は何年も前から積み上がっており、現代天文学最大の謎の一つとされている。これを「宇宙論の危機」と呼ぶ研究者もいるほどだ。 そしてこのほど、ハッブル宇宙望遠鏡を使って膨大なデータを収集した研究者グループが新たな膨張速度を発表、このズレが統計的な偶然である可能性は100万分の1であると報告した。つまり、まだ明らかになっていない宇宙の基成分が存在しているか

    宇宙の膨張速度に新たな推定値、宇宙論モデルより8%速く
  • クジラは想像以上の大食いだった、従来推定の3倍も、研究

    ザトウクジラは大量の糞を排泄する。糞には鉄分が豊富に含まれており、海の栄養循環において重要な役割を果たしている。写真のザトウクジラはカリフォルニア沖の個体。(PHOTOGRAPH BY JOHN DURBAN) 「ヒゲクジラはいったいどれくらいべるのだろう?」 すべてはこの素朴な疑問から始まった。 「ごく基的な問題なので、30年、40年、50年も前に答えが出ていると思っていましたが、実際には誰も測定したことがなかったのです」と、米スタンフォード大学ホプキンズ海洋基地の博士研究員で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーであるマシュー・サボカ氏は語る。 ヒゲクジラとは、ザトウクジラ、セミクジラ、シロナガスクジラなど、海水からオキアミや動物プランクトンなどの餌をこし取ってべるクジラのグループ。たいていは深さ数百メートルの海中で餌をべるため、その行動を観察するのは容易ではない。

    クジラは想像以上の大食いだった、従来推定の3倍も、研究
  • 絶滅した孤高のフォークランドオオカミ、謎の起源に新たな光

    絶滅したフォークランドオオカミ(Dusicyon australis)のイラスト。チャールズ・ダーウィンがビーグル号で旅をした後、1839年にジョージ・ウォーターハウスによって描かれた。(ILLUSTRATION BY NATURE PICTURE LIBRARY) 南大西洋の英領フォークランド諸島(スペイン語名はマルビナス諸島)には、かつてフォークランドオオカミというイヌ科の動物が生息していた。島で唯一の陸生哺乳類で、19世紀に絶滅してしまったが、ヨーロッパ人が見つけたときに島に人が暮らした痕跡はなく、フォークランドオオカミは自力で海を渡ってやって来たと考えらえていた。 しかし、考古学と生態学を組み合わせた新たな研究により、フォークランド諸島にはヨーロッパ人が見つける前にも人が住み、そして彼らがフォークランドオオカミを連れてきた可能性が示された。論文は10月27日付けで学術誌「Scien

    絶滅した孤高のフォークランドオオカミ、謎の起源に新たな光
  • 5〜11歳へのファイザー製コロナワクチン、米国はなぜ推奨?

    新型コロナウイルス感染症のワクチンを男児に接種する小児科医。ドイツ、ノルトライン・ベストファーレン州で6月9日に撮影。(PHOTOGRAPH BY DAVID YOUNG, PICTURE ALLIANCE VIA GETTY) 10月26日、米品医薬局(FDA)の諮問委員会が5〜11歳の子どもを対象としたファイザー・ビオンテック製ワクチンの安全性と効果に関する報告書を審議し、接種を推奨すると決めた。今後FDAが承認し、米疾病対策センター(CDC)が追随すれば、米国に2800万人いるこの年齢層の子どもたちもワクチン接種を受けられるようになる。 ファイザーがFDAに提出した臨床試験の結果は、ワクチンが5〜11歳の子どもたちを強力に保護することを示唆している。発症を防ぐ効果は90.7%で、現在広まっているデルタ株にも有効だった。 諮問委員の一人で、ボストン小児病院の精密ワクチンプログラムを率

    5〜11歳へのファイザー製コロナワクチン、米国はなぜ推奨?
  • おなかの中まで見えてます、半透明のカエルたち

    体が透けているため、雌のキボシアマガエルモドキ(Hyalinobatrachium aureoguttatum)の腹腔内にある卵が丸見えだ。この写真は生息地の近くに設置した簡易スタジオで撮影した。(PHOTOGRAPH BY JAIME CULEBRAS) 中南米に生息している小さくて、体が半透明なグラスフロッグたち。その驚きの姿を見てみよう。 月の出ていないある夏の夜、エクアドルのアンデス山脈の麓で、小さな雄のカエルが沢の脇に生えた葉の上に座っている。 雌の気を引くために絶好の舞台を選んだその雄は、甲高い声で自分の存在をアピールする。だが、場所さえ良ければ万事がうまくいくわけではない。その黄緑色のカエルは、ほかの雄を見て、どうやって雌と懇ろな関係になるかを学んだ。産みつけられた“誰かの”卵塊を見つけると、何時間も寄り添って、大切な卵を守っているふりをする。すると驚くべきことが起きる。その

    おなかの中まで見えてます、半透明のカエルたち
  • 中国で発見された人類の頭骨、新種「竜人」と報告、懐疑の声も

    14万6000年以上前に、中国東北部の寒冷な地域に暮らした人類「竜人」。(ILLUSTRATION BY CHUANG ZHAO) 1930年代初頭、今の中国黒竜江省のハルビン近郊で、地元の人が川の泥から奇妙な頭骨を発見した。ほぼ完全な形をとどめたその頭骨は、眉骨が大きく突き出ており、その下に四角い眼窩があった。 何より尋常でなかったのは大きさだ。「巨大なんです」と、この頭骨の研究に携わった英ロンドン自然史博物館の古人類学者クリス・ストリンガー氏は語る。 見つけた男性は、使われなくなった井戸の中に頭骨を隠した。それから90年近くたった現在、この骨が新種の人類のものであるとの研究成果が、6月25日付けで学術誌「The Innovation」に掲載された。新たに付いた学名はHomo longi(ホモ・ロンギ)、「竜人」といった意味だ。 同誌にはこの頭骨について、さらに2つの論文が掲載された。一

    中国で発見された人類の頭骨、新種「竜人」と報告、懐疑の声も
  • ナショジオ、自然保護に貢献したエクスプローラーを表彰

    海洋生態学者のエンリック・サラ氏。500万平方キロ超の海を保護する取り組みを高く評価され、ナショナル ジオグラフィック協会の名誉あるハバード・メダルを授与された。(PHOTOGRAPH BY MANU SAN FELIX, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 彼女はケニアのゾウを守るために人生をささげている――保全生物学者のポーラ・カフンブ氏が「ロレックス・ナショナル ジオグラフィック・エクスプローラー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。これは地球が直面する重要な問題に光を当てている人物にナショナル ジオグラフィック協会が毎年贈っている賞だ。 今回初めてバーチャル開催されたエクスプローラーズ・フェスティバルでは、2つのバフェット自然保護リーダーシップ賞、ナショナル ジオグラフィック協会最高の栄誉であるハバード・メダルを含む4つの賞が授与された。 「不思議な、そして夢のような方法

    ナショジオ、自然保護に貢献したエクスプローラーを表彰
    futenrojin
    futenrojin 2021/06/22
    探検家になりたがる人がもっと増えてほしい。
  • シーラカンスの寿命は約100年か、従来説の5倍、成熟に55年

    アフリカのソドワナ湾で泳ぐシーラカンス。長い間、絶滅したと思われていたが、1938年に再発見された。(PHOTOGRAPH BY LAURENT BALLESTA, NAT GEO IMAGE COLLECTION) かつて、恐竜と一緒に絶滅したと思われていた原始の深海魚シーラカンスが、またしても科学者たちを驚かせている。新しい研究によれば、体長2メートルの「生きた化石」は、従来考えられていたより5倍も長く、おそらく100年ほど生きるという。 6月17日付けの学術誌「Current Biology」に発表された論文は、既知の2種のうちの1種、アフリカシーラカンス(Latimeria chalumnae)のうろこを新たに分析したところ、これまで推定されてきた寿命20年は誤りであると結論づけている。 さらには、卵胎生のシーラカンスのメスは5年間も子を身ごもり、オスとメスで若干異なるものの、産

    シーラカンスの寿命は約100年か、従来説の5倍、成熟に55年
  • 骨の難病と闘った女性、願い叶い博物館の展示に

    キャロル・オーゼルは、地球上で最も珍しい病気の1つにかかっていた。進行性骨化性線維異形成症(FOP)というこの難病は、筋肉などの軟組織を骨に変えてしまう。(PHOTOGRAPH BY CONSTANCE MENSH FOR THE MUTTER MUSEUM OF THE COLLEGE OF PHYSICIANS OF PHILADELPHIA) キャロル・オーゼルが初めてハリー・イーストラックの「二層骨格」を目にしたのは1995年のことだった。米国ペンシルベニア州、フィラデルフィア外科医カレッジのムター博物館で、一際目を引くその人骨を見た瞬間、いつか「ハリーの隣に展示されたい」と彼女は思った。 それから20年以上が過ぎた。死が近づき、右手の3の指しか動かせなくなった彼女は当初の意志を貫き通した。彼女の最期の願いは、自分の遺体をムター博物館に寄付することだった。彼女とイーストラックがか

    骨の難病と闘った女性、願い叶い博物館の展示に