2010年代の様々なテクノロジー・プラットフォームと、音楽や映画、ゲームなどのエンタテインメントの関係を振り返る機会が増えたのだが、近年を調べれば調べるほど、アメリカを中心にSNSやプラットフォーム、ウェブメディア、ニュースメディアがどこも「キャンセルカルチャー」を議論する投稿や記事で溢れ返っていたことに気付いた。 キャンセルカルチャーに対する疑問は自分の中で長く抱えていた。が、議論することとなればなかなか難しい。この特集では企画当初、エンタテインメント産業やビジネスにおける「ファンダム」と、テイラー・スウィフトあるいはビリー・アイリッシュの関係といった極めて明るい話題を取り上げようとしたところから始まったのだが、ファン・コミュニティの実情を調べていくうちに、「ネット上での発言権の自由」や「ヘイト」「アクティビズム」といった認識や行動倫理の違いにもぶつかり、徐々に膨らんできた違和感を事象と