体育館に集まった130人の生徒は、マスク姿の女性の話に静かに耳を傾けていた。 「性交する以上、誰にでも妊娠や性感染症のリスクがあります。防ぐためにはコンドームや低用量ピルの使用が効果的です」 語りかけているのは、正しい性知識の普及に取り組むNPO法人「ピルコン」代表の染矢明日香さん。2月、横浜市立深谷中学の3年生に向けて出前授業を実施した。生徒からは好評で「もっと早く知りたかった」という声も聞こえた。 深刻化する性暴力から身を守るには、正しい知識が必要。ただ、日本は性教育が明らかに不足している。全国の小中学校では4月から、子どもへの性暴力を防ぐための「生命の安全教育」が始まるが、内容が不十分と指摘する声が上がる。理由は、中学の学習指導要領に「妊娠の経過は扱わない」とする歯止め規定が存在するためだ。 性交を教えることができないと受け止める教員も多く、文部科学省が作成した中学の教材では避妊方法