(承前) 他方で森は一人一人の生身の人間、とりわけ小農や労働者、というミクロな単位においてのみならず、マクロな「国民経済」という単位においても「独立と従属」について考えようとした。レオポルド・エイメリーへの着目(「エイメリーとイギリス帝国主義」)、更に『イギリス農業政策史』「1950年代の日英通商関係」と続く一連の作業は、農業政策と通商政策に止目しつつ、「国民経済」という観念の運命を考察しようとしたものと解釈することができる。 エイメリーら19世紀末から20世紀初めのイギリス帝国主義者たちは、森によればいわゆる「帝国主義者」、巨大な大英帝国による世界支配を志向する覇権論者などではなく、むしろ帝国経済圏というバッファを利用して、ローカルでナショナルなイギリスの経済的自立を確保しようとする国民経済論者である。彼らの思想的原点はいわゆるドイツ歴史学派の原点、フリードリヒ・リストに、更にはスミス以
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