たとえばアメリカでは役員報酬の開示義務が拡大・強化されてきたにも拘らず、役員報酬の高額化傾向は進んだ。 その理由として、徳永・松﨑・斉藤法律事務所レポートは、井川真由美弁護士の論文を引用して2点をあげている(注1)。1つは、開示ルールにより他社よりも低額であることを知った役員が増額要求をするようになったことである(アメリカでは、優秀な役員のヘッドハンティングも多い)。もう1つは、報酬情報を与えられても、株主が役員報酬決定に影響を与えるシステムが確保されていないことである。このような場合、役員報酬の開示は、高額化を促進する可能性も考えられる。 しかし、プライバシーの問題、犯罪誘発等の懸念等から「限度内に減額して、開示を逃れたい」という話も聞かれ(注2)、当開示制度により役員報酬が減額化されるということも十分に考えられる。 実際には増額、減額どちらの効果もあろうが、どちらの効果が支配的かは必ず